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「AI導入が医療機器の世界を変える」、NVIDIA担当者が語る超音波診断やMRIなどで広がる活用(3/5 ページ)

» 2022年08月25日 11時30分 公開
[Sally Ward-FoxtonEE Times]

AI補正で、実際にはないものを映す心配は?

 ノイズの多い画像をAIで補強すると、実際にはないものが映し出される心配はないのだろうか。

 Powell氏は、「誤検出の可能性はあるが、新しいタイプのAIを搭載したデバイスは、臨床試験を含め、他の医療機器と同じ厳格な規制プロセスを経ている」と述べている。

 「品質保証と規制の観点から、医療機器は同じデューデリジェンスを経て、臨床試験段階を通過し、エビデンスを提供する必要がある。FDAや規制機関は、このデバイスが想定通りの性能を発揮しているかどうかを規定する方法について、他の医療機器と同様に非常に厳しい裁定を下している」(Powell氏)

 AIをベースとする機能を備えたFDA認可の医療機器は350以上ある。Powell氏は、「業務の効率化を支援するAIアプリケーションなど、規制経路にないアプリケーションはさらに多く、そのうちの数千は現在使用されている」と指摘している。

 Powell氏は、「医用画像を取得するために最初から最後まで人の手で行わなければならない作業の量は多い。潜在的なエラーの数も多く、時間もかかるため、業務効率を改善できる余地は大きい。AIを搭載した医療機器を受け入れるか拒否するかを決定する医師に向けて、さらなる情報の提示が必要だ」と述べている。

患者のプライバシーへの対処は?

 既存のコンピュータビジョン技術と同様に、患者の画像を撮影する場所では、プライバシーの問題に対処する必要がある。

 Powell氏は、「実際問題として、われわれは過去20年間にわたり、患者データのデジタル化に取り組んできた。ただ問題は、こうしたデータがどのように流れているのか、誰がデータにアクセスしようとしているのか、という点にある。データの提供側と受信側の両方に対して、適切な規制を策定し、あらゆるビジネスデータ協定について非常に慎重に検討する必要があるというのが現実だ」と述べている。

 同氏は、「AIを活用したロボット手術の場合、患者の体内で取得された画像には、個人を特定できる要素はない。『Clara Holoscan』(NVIDIAのAI搭載医療機器を開発するためのプラットフォーム)は、非特定化機能を備えているため、患者を特定できる可能性がある皮膚や髪などが写っている画像を、自動で消去することが可能だ。このような画像はどのみち、ロボット手術では不要である」と指摘する。

 「こうした機能により、患者からの信頼を得ることができる。しかし、最終的には誰もが、カメラで撮影されることにもっと慣れていくだろう。今やドアベルでさえ、ビデオ映像をクラウドベースでAI処理する機能を搭載している。それでも、当社がこれまで協業してきたどの企業も、最優先で開発すべきAI機能として、非特定化機能を掲げている」(Powell氏)

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