1994年のICレコーダー発明にまつわるエピソードの続きをご紹介する。
フラッシュメモリに関する世界最大のイベント「フラッシュメモリサミット(FMS:Flash Memory Summit)」の会場では最近、「Flash Memory Timeline」の名称でフラッシュメモリと不揮発性メモリの歴史年表を壁にパネルとして掲げていた。FMSの公式サイトからはPDF形式の年表をダウンロードできる(ダウンロードサイト)。
この年表は1952年〜2022年までの、フラッシュメモリと不揮発性メモリに関する主な出来事を記述している。本シリーズではこの歴史年表を参考に、主な出来事の概略を説明している。原文の年表は全て英文なので、これを和文に翻訳するとともに、参考となりそうな情報を追加した。また年表の全ての出来事を網羅しているわけではないので、ご了承されたい。なお文中の人物名は敬称略、所属や役職などは当時のものである。
前回は、1994年に世界初のICレコーダー(フラッシュメモリを記憶媒体として内蔵する携帯型デジタル音声記憶再生装置)を発明した企業「Norris Communications Corp.(以降はNCCと表記)」と、製品開発で生じた大きなトラブルをご説明した。
前回で述べたように、世界初のICレコーダー「Flashback」(フラッシュバック)はファームウェアに重要なバグを残したまま、出荷されてしまう。このため、事業は大失敗に終わってしまった。
しかしNCCの創業者である発明家ウッディ・ノリス(Elwood “Woody” Norris)は、このままで終わらせない。製品開発に伴って出願した特許が、1990年代後半に相次いで成立した。さらには特許群の権利をノリスが創業した別会社e.Digitalに引き継がせた。そして2008年3月には、e.Digitalがエレクトロニクス大手企業を特許侵害で米国連邦地方裁判所に訴えたのだ。
特許侵害で訴えられた企業はオリンパス、ニコン、カシオ、三洋電機、サムスン電子、LG電子など7社である。世界的に良く知られたエレクトロニクス企業がならぶ。そして訴状を提出したのは、特許侵害訴訟の勝訴率が高いという評判を得ていた、テキサス州東部地区マーシャル支部の連邦地方裁判所である。
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