同氏は、「新しい規制措置によって、世界的な相互依存関係にも影響が及ぶだろう」と指摘する。
あるアナリストが匿名を条件に語ったところによると、今回の規制措置は、中国へのDUV(深紫外線)リソグラフィ装置の輸出をさらに規制する法案の策定へと拡大されていく可能性があるという。現在、SMICをはじめとする中国の半導体メーカーは、DUV装置の輸入を認められている。
また匿名のアナリストは、「新しい規制措置は、中国国内に拠点を置く外国の半導体メーカーの運営にも影響を及ぼすとみられる。例えば、韓国のSK hynixは、中国にある既存工場にGAA技術を適用して拡充する計画を立てているが、それを見直す必要に迫られるだろう」と述べる。
Triolo氏は、「議会から商務省に対し、中国メーカーへの輸出用として軍事用途向けに適用される可能性がある新興技術を、確実に管理できていることを証明するよう、相当な圧力がかかっている。正当化するための要素になっているのが、中国政府の軍民融合(MCF:Military-Civil Fusion)イニチアチブである。高度な半導体技術が、兵器システムや衛星ネットワークなどの支援システムに使われる可能性があるためだ。商務省が現在、こうした点について検討している背景には、TSMCやSamsung Electronicsなどの大手ファウンドリーが、GAA技術によって提供される性能優位性を活用することにより、3nm/2nmプロセス技術の商用化を実現し始めているということがある」と述べる。
米国務省によると、MCFは、中国共産党が世界最先端の技術を採用した軍事力開発を実現するための取り組みだという。MCFの重要な鍵となっているのが、中国の民間部門と中国軍との間の障壁を取り除くという点だ。国務省は、「共産党は、軍事的優位性を確立するために、世界の最先端技術を(盗用も含めて)入手、転用することによって、この戦略を実行している」と主張する。
技術調査会社TechInsightsのアナリストであるDan Hutcheson氏によると、GAA技術に対するEDA(Electronic Design Automation)の規制は、AnsysやCadence、Synopsys、Siemensの一事業であるMentor Graphicsなど、主に米国内の企業に影響が及ぶことになるという。
興味深いのは、商務省が、現在使われている“EDA”ではなく、古い用語である“ECAD”を使用しているという点だ。それが、商務省の技術的な知識レベルを示しているといえるだろう。
Hutcheson氏は米国EE Timesに、「皮肉なことに、米国はこれまで、EDAソフトウェアの分野で大きくリードしてきたが、厳しい輸出規制を受けた中国が、同等レベルに追い付くために多額の投資を行っている。5年前には中国のEDA製品は基本的に使い物にならなかったが、現在では、制約はあるもののかなりの競争力を実現している」と述べている
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