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米国の新たな対中国半導体規制、効果に疑問の声影響は西側諸国にも(4/4 ページ)

» 2022年09月01日 10時30分 公開
[Alan PattersonEE Times]
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軍事用途に関する懸念の「誇張」

 Triolo氏は、「こうした新技術の大部分は、スマートフォンやIoT(モノのインターネット)デバイスの他、AI(人工)アルゴリズム向けに最適化された半導体など、一般的な商業用途向けに適用される。このような技術を使用した半導体が軍事用途に使われる可能性があるとの見方で全般的に合意されているというが、それは過度な誇張ではないだろうか」と述べる。

 また同氏は、「商務省が何をすべきかという決定は、明らかに現政権の権限で行われており、それは大規模な対中国戦略の一部となっている。しかし、目標という観点からは、まだ明確に定義されていない。業界において、技術関連規制の特定のアプローチとして好まれるのは、国家安全保障の正当性が明確に定義された、狭い範囲内の規制ではないだろうか」と付け加えた。

 新しい規制措置は、世界で最も先進的な半導体メーカーに影響を及ぼす可能性がある。

 「TSMCやSamsung、Intelはいずれ最先端ノードでGAAプロセスを導入するようになるだろう。中国のファブレスメーカーが、これらのファウンドリーを使って半導体を製造できる限り、中国は引き続き最先端の半導体開発を継続することが可能だ。こうした状況が発生しているのは、米国が他にもさまざまな輸出規制を実施し、3nm/2nmでの製造に必要な最先端のリソグラフィ装置に規制を課すことによって、中国国内ファウンドリーが最先端ノードを適用した製造を行えないようにしているからだ」(Triolo氏)

 Copenhagen Business Schoolの准教授、Doug Fuller氏は、米国EE Timesの取材に対し、「今回の新しい規制措置は、中国のSMICが米国の半導体メーカーをも上回る7nmノードで半導体を製造しているとの報道を受けて、課されたものだ」と述べている。

 「商務省は、幅広い規制に対する後方支援活動を続けてきた。SMICが7nmノードを適用したとの報道にうろたえ、商務省の取り組みはますます困難なものになっている」(Fuller氏)

過去の同盟が動き出す

 米国は、冷戦時代にまでさかのぼる条約「ワッセナーアレンジメント(Wassenaar Arrangement)」に基づき、国際的パートナーとともに規制を実施する予定だという。

 Triolo氏は、「新しい規制措置は、ワッセナーアレンジメントをベースとして調整されているため、多角的な性質を備える。この特定の規制による影響が及ぶ可能性がある企業は、EDAツールメーカーだ。CadenceやSynopsis、Mentorなどが、最も大きな影響を受けるだろう。しかし、規制内容の文言についてはまだ不明瞭な点がある。『最新版のEDAツールでは、GAA機能をソフトウェアパッケージ全体から切り離すことはできない』として業界は反発している」と述べる。

 「GAA FETの設計機能を分離することが可能な方法で設計されているEDAツールは存在しない。このような規制措置が、実際にどの程度機能するのかは不明だ」(Triolo氏)

 BISによると、米国は、ワッセナーアレンジメントで合意された品目以外にも、半導体製造のための装置やソフトウェア、技術など、さまざまな種類の技術を規制している。米国には、Applied MaterialsやLam Researchをはじめ、世界最大規模の半導体装置メーカーが存在する。

 これらのメーカーは、売上高の大部分を中国に頼っている。例えば、Lam Researchは最新の四半期決算で、売上高の約31%を中国で占めていると発表している。

 Triolo氏は、「Applied Materials、Lam、KLA、Cadence、Synopsis、Mentorといった米国を代表する企業の売上高を見てみると、中国からの売上高がどれだけあるか分かるだろう。輸出規制措置は、このような企業や技術ではなく、大量破壊兵器関連技術を対象として設計されているため、規制の導入は困難であることが判明している。グローバルで複雑なサプライチェーンが問題になることはない」と述べる。

 この新しい規則の発効に際して、産業・安全保障担当商務次官のAlan Estevez氏は、「利益と同時にリスクも認識し、国際パートナーと協調して行動すれば、共通の安全保障目標が満たされ、イノベーションが支援され、世界中の企業が公平な競争の場で事業展開できるようになる」と述べている。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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