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» 2022年10月25日 11時30分 公開

iPhone 14 Proの心臓部、「A16 Bionic」を解析するこの10年で起こったこと、次の10年で起こること(67)(1/3 ページ)

今回は2022年9月16日に発売されたAppleの最新スマートフォン「iPhone 14 Pro」のプロセッサ「A16 Bionic」について報告する。A16 BionicはiPhone 14 Proにのみ採用されている。

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 今回は2022年9月16日に発売されたAppleの最新スマートフォン「iPhone 14 Pro」のプロセッサ「A16 Bionic」について報告する。A16 BionicはiPhone 14 Proにのみ採用されている。

 図1はiPhone 14 Proの梱包箱、本体のディスプレイを取り外した状態、基板(2層構造)のプロセッサ側の様子である。プロセッサ基板の反対面にはNANDストレージメモリやWi-Fi/Bluetoothチップが搭載されている。プロセッサ側は主にA16 Bionicと、対になって電力を最適化する電源ICが配置されている。

図1:「iPhone 14 Pro」の梱包箱と、本体のディスプレイを外した状態[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 A16 BionicにもAppleマークが搭載されているが、電源ICにもAppleマークが搭載されている。Appleはデジタルプロセッサだけでなく、アナログ回路で構成される電源ICも自ら設計開発して、チップセットとして活用しているわけだ。

 多くのスマートフォン向けのプラットフォームを提供する半導体メーカー(QualcommやMediaTek、Samsung Electronics、UNISOCなど)もプロセッサと電源ICをセット化し、最適化を図っている。AppleのA16 Bionicは、デジタルとアナログを組み合わせることで、電力性能や演算性能を上げているという点で、専業半導体メーカーと同じ構造を自社で作り上げているのだ。

少ない容量のDRAMと、今回も採用されているシリコンキャパシター

 図2は、A16 Bionicを基板から取り外した様子である。真ん中はA16マークがあるパッケージのMOLDを取り除いて、DRAMを見えるようにしたものだ。A16の文字の下には2組のDRAMが配置されている。それぞれ2枚重ねとなっており、トータルで4枚のDRAMシリコンが文字の下に埋め込まれている。

図2:「A16 Bionic」のパッケージの様子[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 DRAMはLPDDR5 1.5GB。4枚で6GBとなっている。現在Android系のスマートフォンではLPDDR5を8〜12GB搭載するものが多いがAppleは、6GBと少ない容量となっている。少ない容量であってもストレスなく動作するように、さまざまな工夫がなされているのだ。DRAMの上下には黒く細長いプレートが配置されている。トランジスタや配線の存在しない、いわゆるダミーシリコンと呼ばれるものである。DRAMの存在するエリアはパッケージのほぼ中央だ。上下はシリコンが存在しないので、高さが違うものになっている。そのためダミーシリコンを入れることで段差を無くし、さらにパッケージの補強もできるものとなっている。

 右は基板からパッケージを取り外したパッケージの裏面である。裏面には端子とともに、所々に黒い小さなシリコンが8個埋め込まれている。電源特性を改善するためのシリコンキャパシターだ。Appleでは「A11 Bionic」から採用しているので、Aシリーズでは既に6年も使われている、こなれた技術の一つである。「MacBook」などにも搭載されている「Mシリーズ」プロセッサにもシリコンキャパシターは多数使われている。CPUやGPUなどの高速、大規模演算器の直上にキャパシターが配置されることで、インピーダンスや抵抗の少ない特性改善効果をもたらしている。シリコンキャパシターだけでなく、黒く見えるところには放熱対策用のジェルが塗り込まれている。ノイズ、発熱という半導体動作に影響を及ぼす問題にパッケージでも多々対策が成されているわけだ。

 図3はA16 Bionicのプロセッサシリコンを取り出した様子である。図2のDRAMの裏面になる。DRAMの真裏にプロセッサが存在するので、距離としてはほぼ最短*)になっている。

*)最短は、DRAMとプロセッサを回路面で向かい合わせるマイクロバンプ方式だ。これは日本メーカーの東芝やソニーが2010年前後に活用した。

図3:A16 Bionicのプロセッサを取り出した様子[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 左はプロセッサシリコンの直上にシリコンキャパシターが設置されている状態である。シリコンキャパシターを取り除くとプロセッサシリコンだけになる。真ん中は、基板(Glass EPOXY)からプロセッサシリコンを取り外して洗浄を行った様子。プロセッサシリコンには多層配線が用いられており、内部の回路などを見ることはできない。配線層を剥離したものが右になる。当社では極めて鮮明な写真を撮影しているが、本稿ではボカシを入れている。鮮明な写真であればSRAMの容量やサイズ、CPUの構造(L1のサイズ)など手に取るように分かるものとなっている。シリコンの中身を見ると、A16 Bionicは、ほぼ隙間のない、非常に合理的で緻密な設計が成されていることがよく分かる。多くのメーカーのプロセッサを解析しているが、Appleの設計力は、やはり現在もトップクラスだといえよう。

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