図4は2021年の「iPhone 13」シリーズからApple製品に採用されている「A15 Bionic」のCPU部と、2022年のiPhone 14 Proに採用されたA16 BionicのCPU部の比較である。A15 Bionicは5nmプロセスノード、A16 Bionicは4nmプロセスノード(5nmのハーフノード。5nmのトランジスタ性能の向上版である)と差があるが、ほぼCPUの構成は同じものになっている。
高性能CPUが2基、高効率CPUが4基、合わせて6コアという点は、A15もA16も同じである。ただし若干のアーキテクチャバージョンの差と、高速CPUのL2キャッシュ容量アップの差が存在する。またトランジスタ性能の向上も相まって、動作周波数は3230MHzから3460MHzへと、おおよそ7%アップしたものとなっている。総じてA16 Bionicは、A15 Bionicに比べて性能が高いプロセッサである! というわけだ。
図5にA16 Bionicの内部の様子を示す。左側からA16マークのあるパッケージトップ、その下に4枚のDRAMシリコン、補強・平たん化のためのダミーシリコン、右側からパッケージの裏面(InFO)、特性を改善するためのシリコンキャパシター、A16 Bionic プロセッサシリコンとなっている。
立体的なシリコンの重ね合わせによってパッケージ内で最短化と特性向上も実現している。パッケージ内には15個ものシリコンが存在しているのだ。Qualcommの「Snapdragon 8 Gen 1」やMediaTekの「Dimensity 9000」なども、特性と最短距離が実現できるように多くの工夫を行っているが、1パッケージ内に全てを埋め込んでいるAppleのプロセッサは突出したものになっている。QualcommやMediaTekは、パッケージの上にパッケージを乗せるPOP(Package On Package)という技術を用いているので、プロセッサ側のパッケージ内には1シリコンしか存在していない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.