士通と東京工業大学は、東京工業大学すずかけ台キャンパス内に「富士通次世代コンピューティング基盤協働研究拠点」を設置した。現行HPCの処理能力を超える次世代コンピューティング基盤の確立と、応用範囲の拡大を目指す。
富士通と東京工業大学は2022年10月、東京工業大学すずかけ台キャンパス(神奈川県横浜市)内に「富士通次世代コンピューティング基盤協働研究拠点」を設置した。現行HPCの処理能力を超える次世代コンピューティング基盤の確立と、応用範囲の拡大を目指す。
協働研究拠点は、富士通が展開する「富士通スモールリサーチラボ」の一環で、東京工業大学オープンイノベーション機構の支援を受けて設置した。設置期間は2022年10月20日から2026年3月31日までとなっている。
富士通は、スーパーコンピュータ「富岳」など高性能コンピュータを用いて、気象予測や創薬分野の科学技術計算を実行するためのアプリケーションを開発してきた。東京工業大学も、GPUやサーバ液浸技術といったコンピューティング技術を活用し、大規模深層学習や科学技術計算の高速化を達成してきた。
そこで今回、富士通の「研究開発力」と東京工業大学の「学術研究」を組み合わせ、東京工業大学が保有するスーパーコンピュータ「TSUBAME(ツバメ)」の処理能力を超えるような次世代コンピューティング基盤を、共同で開発していくことにした。新たな技術の開発に加え、人材の育成も視野に入れている。
協働研究拠点は、東京工業大学情報理工学院の増原英彦学院長・教授を拠点長とし、東京工業大学学術国際情報センター先端研究部門の遠藤敏夫教授と、富士通研究所研究本部の赤星直輝フェロー(コンピューティング担当)両氏が副拠点長を務める。研究者として当初は、富士通と東京工業大学の両方から合計約20人が所属して活動を行う。将来は人員の拡充も計画している。
研究課題としては大きく4つのテーマを挙げる。「流体解析などの科学技術計算や大規模、複雑なAI処理を現行のCPUやGPU上で動作させ、性能におけるボトルネックを解析」「解析結果を踏まえ、さらなる高速化を実現するコンピューティング基盤のアーキテクチャ探索・設計」「設計したアーキテクチャを最大限に生かし、かつ移植性を担保するコンパイラなどのソフトスタックを開発」「研究成果により実現した新たなコンピューティング基盤上で各種アプリケーションの動作を解析し最適化」することである。
具体的な役割分担はこうだ。富士通がアプリケーション高速化と効率化に向けた「アーキテクチャの強化」や「計算リソースの動的最適化」などの技術について、コンピューティング基盤へ適用するための評価と検証を行い、効果が見込める要素技術を抽出する。その上で、製品適用に向けた拡張や、ハードウェアとソフトウェアの協調といった応用研究を行う。
これに対して東京工業大学は、大規模AI処理や流体解析などの科学技術計算を高速処理するための「アプリケーション」や「コンパイラ」「アーキテクチャ」を提案。富士通と協力して、その性能や機能をプロトタイピングの環境で評価することにしている。
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