東京工業大学とアオイ電子らによる共同研究チームは、広帯域のチップ間接続性能と集積規模の拡大を可能にするチップレット集積技術「Pillar-Suspended Bridge(PSB)」を開発したと発表した。
東京工業大学科学技術創成研究院未来産業技術研究所の栗田洋一郎特任教授とアオイ電子らによる共同研究チームは2022年10月、広帯域のチップ間接続性能と集積規模の拡大を可能にするチップレット集積技術「Pillar-Suspended Bridge(PSB)」を開発したと発表した。
素子の微細化や高集積化によって性能向上を実現する「ムーアの法則」が、物理的な限界を迎えようとしている中、近年はチップレット集積技術が注目されている。ICチップの集合体で主要なシステムを構成する技術で、異なる機能や構造のICチップを大規模に集積することができる。
今回開発したPSB技術は、チップレットとシリコンブリッジの接続を「MicroPillar」と呼ぶ柱状金属で行う。チップレット集積体はブリッジとともにモールド樹脂封止されている。外部電極と接続するのは、シリコンブリッジ側のモールドを貫通する「Tall Pillar」である。また、「All Chip-last」と呼ぶ製造プロセスにより、高い接合精度と作業中のダイシフトを抑制できるという。
こうした構造にしたことで、チップ間接続密度や電気特性の向上、外部接続配線の高周波特性や放熱性能の改善などが可能となる。しかも、ブリッジの配線種類を選択することができ、集積規模を拡大する時に歩留まりを気にする必要もないという。
PSB構造はシンプルで合理的な構造であり、Fan-Out機能を有する配線層を接続すれば、チップレット集積パッケージや大規模なチップレット集積システムを構成することができる。今回は、PSB技術を実証するため試作機を用いて、その実現性も実証した。
なお、2022年10月1日付で、「チップレット集積プラットフォーム・コンソーシアム」が設立された。今回の研究を含むチップレット集積プラットフォーム技術全般を対象に、製造技術/要素技術からアプリケーションに至るまでの研究開発とその産業化を狙いに活動する。
コンソーシアムメンバーは東京工業大学の他、大阪大学(菅沼克昭特任教授/大阪大学名誉教授)や東北大学(福島誉史准教授)を中心に、アオイ電子、アピックヤマダ、アルバック、青梅エレクトロニクス、奥野製薬、住友電気工業、住友ベークライト、太陽インキ製造、トーヨーケム、フォームファクター、マクセル、リンテック、FICT、他3社が参加。協賛企業として、ディジタルメディアプロフェッショナル、トッパン・テクニカル・デザインセンター、NSCore、他13社が参加を表明している(2022年9月現在)。
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