日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は、「EV(電気自動車)事業戦略」に関する記者説明会を開催した。EVの本格普及に向けて同社は、安全性を確保しながら、「さらなるコストダウン」や「航続可能距離の最大化」「充電時間の短縮」につながる半導体デバイスを提供していく。
Texas Instruments(TI)の日本法人である日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は2022年10月26日、「EV(電気自動車)事業戦略」に関する記者説明会を開催した。EVの本格普及に向けて同社は、安全性を確保しながら、「さらなるコストダウン」や「航続可能距離の最大化」「充電時間の短縮」につながる半導体デバイスを提供していく計画である。
自動車業界において「電動化」は大きな流れの1つである。特に、EV用パワートレインシステム向け製品は、半導体メーカーにとっても新たな領域となる。半導体デバイスの搭載量は、従来のエンジン車に比べ、1台当たり3〜4倍に増える。車1台当たりの半導体搭載量を金額ベースに換算すると、「従来の一般的な車両は300〜500米ドル。これに対しEVでは、1000〜2000米ドルになる」との予測もある。
このため、自動車分野に注力する半導体メーカーも多い。一方で、現行のEVは航続可能な距離が十分とはいえず車両価格も高いなど、市場拡大に向けて解決すべきいくつかの課題があると指摘する。
こうした中でTIは、40年以上にわたって車載システム向け半導体製品を開発し、供給してきた。TIのアナログ・パワー製品担当でシニアバイスプレジデントを務めるMark Gary氏は、自動車産業におけるTIの強みについて、「多様な製品群」や「高い品質と製造/供給能力」「設計/開発の加速化」などを挙げた。
車載用として認定を受けたTI製品は、7000種以上にも及ぶ。また、顧客がシステム設計/開発を迅速に行えるよう、約150の車載用アプリケーションや、動作検証を済ませた350を超える回路ベースのレファレンスデザインなどを用意している。
TIの製造拠点は世界に15カ所あり、高品質の製品を長期にわたって安定供給できる体制を整えている。新たに300mmウエハー工場を6カ所建設する計画も明らかにした。これら新工場では、アナログ製品や組み込み製品の製造に適した45〜130nmプロセステクノロジーノードを採用する。米国テキサス州リチャードソンの「RFAB2」と同ユタ州リーハイの「LFAB」が既に稼働した。さらに、同テキサス州シャーマンでも同様に4つの300mmウエハー工場を建設する計画があるという。
Gary氏は、「6カ所の300mmウエハー工場が本格稼働すれば、2030〜2035年にTIの売上高は、現在の2倍に増える」と話す。6カ所の新工場とは別に、日本の会津工場(福島県会津若松市)でも、生産能力を増強中だという。
メーカーとして製品の品質を保証することも重要である。TIは高い品質を維持するため、設計から製造、パッケージング、テスト、納品まで総合的に手掛けている。「製品の80%は自社のウエハー工場で生産している。新工場が稼働する5〜10年後には、自社工場での生産比率が90%に達する見通し」(Gary氏)である。前工程を外部に委託するのは、28nmや16nmより微細なプロセス技術を用いて製造する半導体デバイスに限られるという。
世界的な半導体不足もあり、大手半導体メーカーを中心に、設備投資は高水準で推移する。ただ、そのほとんどは28nm以下の微細なプロセステクノロジーノードに対する投資である。これに対し同社は、「車載用デバイスの95%は、45〜130nmプロセステクノロジーノードで製造されることになる」(Gary氏)と判断し、新工場への投資を決めた。100〜150nmプロセステクノロジーノードで量産中の現行製品についても、必要に応じて再設計を行い、新工場での生産に順次移行していく予定である。
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