米国のCHIPS法(正式名称:CHIPS and Science Act)によって、同国内での新たな半導体工場の建設ラッシュが始まった。現在、計画中あるいは建設中の新工場は少なくとも9カ所に及び、数多くの既存工場でも拡張が計画されている。そこで業界が直面する課題の一つとして挙げられるのが、それらの工場を運営/サポートできるほど十分なスキルを持つ労働力の確保だ。
米国のCHIPS法(正式名称:CHIPS and Science Act)によって、同国内での新たな半導体工場の建設ラッシュが始まった。現在、計画中あるいは建設中の新工場は少なくとも9カ所に及び、数多くの既存工場でも拡張が計画されている。一方で、業界が直面する課題の一つとして、世界各地の膨大な製造能力と、半導体業界の宿命であるシリコンサイクルをマッチできるか、という点が挙げられる。
だが、迫りくる課題はもう一つあるかもしれない。それは、それらの工場を運営/サポートできるほど十分なスキルを持つ労働力の確保だ。
世界半導体製造に占める米国のシェアは、1990年の37%から2021年にはたった12%にまで落ち込んだ。そうした状況の中、バイデン政権は「米国内の製造業の復活、高賃金の雇用創出、米国のサプライチェーンの強化、そして未来の業界の加速化」を目指し、CHIPS法を可決した。
ホワイトハウスによると、CHIP法は米国での半導体の研究、開発、製造、労働力開発に527億米ドルを投じるものだ。これには390億米ドルの製造インセンティブが含まれており、その内訳の一例として自動車や防衛システムに使用されるレガシーチップへの20億米ドル、研究開発(R&D)と労働力開発への132億米ドル、国際情報通信技術の安全と半導体サプライチェーン活動への5億米ドルが挙げられる。また、CHIPS法では半導体や関連機器の製造への設備投資に25%の投資税額控除が適用されるという。
CHIPS法の可決前でも、地方政府間の新たな半導体工場を巡る競争は当然ながら激しかった。24時間操業の半導体工場を10年以上構えるようになることに加えて、そのような施設には地元のインフラへの膨大な投資やサポートのための教育が必要になる。また、建設中や操業中には数千もの雇用が創出される上に、その施設があるエリアに他の企業や技術職を長期間にわたり呼び込むことになる。これらは全て、地域社会への投資や経済成長につながる。
例えば、Intelはオハイオ州コロンバス近郊の新たな製造拠点について(初期には2棟の工場が新たに建設される予定)、「Intelでの3000人の雇用に加え、建設期間にわたり建設業関連で7000人の雇用を生み出すことが見込まれる。加えて、サプライヤーやパートナーから成る幅広いエコシステムにわたり、1万人もの長期間の雇用を地域社会に生み出すことが期待される」としている。
これらの数字はやや正確性に欠けるが、新しい半導体工場ごとに工場内で平均1500〜2000人の新規雇用があるほか、工場の24時間365日の運用をサポートするために必要な半導体製造装置メーカーなどのパートナー企業で少なくとも数百人の技術サポート職が創出されると想定して差し支えないだろう。
CHIPS法の成立によって、米国の半導体生産に関連するあらゆる企業が、政府の財政支援を獲得しようと殺到している。最大のインセンティブは工場自体に割り当てられる可能性が高く、プロジェクト当たりのインセンティブが40億米ドル以上となる可能性もある。これまでのところ、Intelの2つの新しい工場に加えて、GlobalFoundries、Micron Technology、Samsung Electronics、SkyWater Technology、Texas Instruments、TSMCの6社が米国に新工場を建設することを発表している。
これは、既存工場と新しく海外工場で計画されている拡張に追加して行われるものである。
例えばIntelは、ドイツとイスラエル、アイルランドでの新工場建設や拡張に340億ユーロ以上を投資することを約束している。米国の市場調査会社であるTIRIAS Researchは、特に最近は発表されることの少ないアナログ半導体の生産について、近い将来新しい工場が発表されると考えている。
今後3年間に完成予定の米国の新しい工場だけでも、半導体生産への投資額は1000億米ドルを上回っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.