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» 2022年11月11日 11時00分 公開

実現に向け進む人間型ロボットの現状と課題ハードとソフト両面から見る(1/2 ページ)

人間に酷似した外見や動きを実現する、ヒューマノイドロボット(人間型ロボット)は、ここ数十年間で大きな進展を遂げてきたが、現在もまだ数々の重要な問題や課題を抱えている。

[Andrew BeaulieuEE Times]

 ロボティクス分野では、これまで何十年にもわたる取り組みが行われてきたが、その軌跡を見ると、明らかな2極化がみられる。

 まず一つは、力強い発展を遂げてきた特定用途向けのロボットだ。例えば、製造や軍事、産業などのさまざまな用途向けとして、1つの機能だけを非常にうまく実行できるよう設計されている。利用/導入の規模が大きいロボットの大半が、これに該当する。

 もう一方は、人間に酷似した外見や動きを実現する、ヒューマノイドロボット(人間型ロボット)の開発だ。ヒューマノイドロボットは、さまざまな種類の異なるタスクや環境にうまく対応することを目的とするが、何か一つに特化しているわけではないため、いろいろな意味で特定用途向けロボットを補完する存在だといえる。

 ヒューマノイドロボットは、ここ数十年間で大きな進展を遂げてきたが、現在も多くの重要な課題を抱えている。

なぜ“ヒューマノイド”なのか

 ヒューマノイドロボット分野を正しく理解するためには、まずその技術開発の動機やメリットについて疑問を持つことから始める必要がある。ロボットは、さまざまな面で人間の能力をしのぐことができるが、人間を模倣するロボットを開発することにはどのようなメリットがあるのだろうか。

 この疑問に対する答えは主に、ヒューマノイドロボットが実現を目指す、“汎用マシンとしての機能”の中にある。ヒューマノイドロボットの目的は必ずしも、人間では対応できないタスクを実行することではない。人間が行うには危険すぎる、退屈すぎる、汚すぎるといったタスクを実行することにもあるのだ。

 この点を踏まえると、ロボットが、人間でも対応可能なあらゆる機能を実行できるようにするためには、人間の生活環境でシームレスに移動できる必要がある。ここで興味深いのが、人間の環境は、人間が自らの身体/能力上の制約に対応できるよう、既に人間によって作り出されたものであると言う点だ。例えば階段が誕生したのは、建造物の中を昇降する上で最適な手段だからというよりは、人間が構造物の中を昇降する場合に最も便利な手段であるからだ。

 このため、人間に合わせた環境の中に存在することができる汎用マシンを開発するためには、人間のように動けるということが不可欠となる。

人間の模倣は非常に難しい

 人間の動きを模倣することが可能なロボットに対する要望やニーズの高まりに反し、その実現は非常に難しい。最大の課題は、人間が「実にうまく設計されている」という点だ。それは、ロボット工学のあらゆるレイヤーで明らかになっている。

 例えば、力学的な観点から見ると、二足歩行は身体的に非常にきつい作業だ。それに合わせて、人体は、膝など関節の力の密度が非常に高くなるように進化し、適応してきた。ヒューマノイドロボットの設計の歴史において、この力の密度と二足歩行に固有の動作要件をモーターに適合させることは困難だった。もう1つの例は足首の関節だ。足首の関節は非常に複雑で、歩行の安定性にとって重要だが、複製するのは困難だった。

 人体は、単なる機械的な特性を超えて、非常に複雑で素晴らしい感覚システムを頼りに生活環境に適用している。人間と同じように環境を理解するには、聴覚や触覚、視覚などの人体システムを厳密に模倣できる技術の開発が必要となる。ただし、これは世界から感覚データを取得するために必要なことにすぎない。実際には、人体は、数百万年にわたる進化の過程で最適化された神経系を活用して、この感覚情報を全身に伝えることもできる。人間の感覚神経系と同じ機能をロボットに授けることは、この分野で何十年にもわたって続けられている挑戦だ。

 最終的には、感覚と通信、力学を統合した制御/計画システムを構築することが大きな課題となる。ロボットには、環境を解釈し、関節を協調して動かすことができるだけでなく、これらの機能を統合して、世界を自律的にうまくナビゲートする方法が必要である。これを行っている人体の能力を模倣するには、アルゴリズムレベルからドライバー、低レベルのファームウェアレベルに至る全てにおいて、高度なロボット工学ソフトウェアスタックが必要だ。

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