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新たな局面を迎えつつある新興メモリFRAMとReRAMに高い注目度(2/3 ページ)

» 2022年12月27日 11時30分 公開
[Gary HilsonEE Times]

FRAMの長所と、抱える課題

 FRAMがこれまで40年近くも存続してきたのは、他のメモリよりもスイッチングエネルギーが少なくて済むために不揮発性と低消費電力量を実現可能だからだ。Coughlin氏とHandy氏のレポートでも指摘されているように、FRAMの販売数量は、他のあらゆる新興メモリの合計販売数量よりも多いという。書き込みエネルギーが低いというFRAMのメリットを利用した用途例の一つに、富士通が開発した交通系ICカード用RFIDチップがある。無線信号からエネルギーを取り入れることによって、各取引を実行するという。

 FRAMが現在直面している課題としては、鉛(Pb)やビスマス(Bi)などの材料関連の問題のために、これまで標準的なCMOSプロセスとの統合が難しかったという点がある。このために、小規模プロセスでの微細化がうまくいかないのだ。スケーラビリティを実現する上で重要な鍵となるのが、CMOSプロセスとの統合と、3D(3次元)化の実現である。現在開発が進められているFRAMセルとしては、キャパシターベースのFRAMと、強誘電体トランジスタ(FeFET)、強誘電トンネル接合(FTJ:Ferroelectric Tunnel Junction)の3種類がある。レポートによると、過去10年間で、鉛フリーかつビスマスフリーの酸化ハフニウムのような新材料が開発されたことにより、FRAMに対する熱意が再燃してきたという。

 ドイツ・ドレスデンのFerroelectric Memory Companyは、NaMLabが2011年に、FRAMの限界を超えることを目指して発表した、酸化ハフニウム研究を基礎とする企業だ。酸化ハフニウムは、ほぼ全てのHKMG(High-k/Metal Gate)プロセス向けにゲート絶縁膜として機能するため、標準的なHKMGトランジスタのゲート絶縁膜を修正して強誘電体化することにより、不揮発性HKMGトランジスタを作ることができる。これが、強誘電体トランジスタ(FeFET)だ。

FRAMと似た課題を抱えるReRAM

 FRAMとReRAMは、成功実績や抱えている課題がよく似ている。いずれも放射線耐性を備え、低密度での成功を収めているが、ReRAMは、密度の向上やディスクリートメモリとしての実用化などの面で苦戦しているようだ。イスラエルのWeebit Nanoは、積極的な取り組みで注目を集めてきたReRAMメーカー企業である。同社のディスクリート酸化ケイ素ReRAM向けに必要なセレクター(セル選択素子)技術を開発すべく、多大な力を注いでいる。

 Weebit Nanoは、同社のReRAMモジュールの技術認定を完了させたところだ。このReRAMモジュールを製造した研究開発パートナーであるフランスCEA-Letiは、Weebit Nanoが前進していく上で重要な役割を担っている。Weebit Nanoのマーケティング担当バイスプレジデントを務めるEran Briman氏は、「この技術認定は、JEDECが策定した不揮発性メモリ(NVM)向け業界標準規格をベースとして行われ、Weebit Nanoの組み込みReRAM技術が量産向けとして適していることが実証された。当社のReRAMデモチップは、組み込みアプリケーション向けのフルサブシステムで構成され、ReRAMモジュールやRISC-VベースのMCU(Micro Controller Unit)、システムインタフェース、メモリ、周辺機器などが含まれている」と述べる。

Weebit NanoのReRAMモジュールおよび周辺システムの構成 Weebit NanoのReRAMモジュールおよび周辺システムの構成 出所:Weebit Nano

 一方で、Weebit NanoのReRAMモジュールは、米SkyWater Technology(以下、SkyWater)の米国の工場から提供されているという。また同社のReRAMは、標準的なツールや成熟したプロセスフローでの製造が可能であるため、顧客のSoC(System on Chip)設計に簡単に取り入れられるということが実証された。

高密度化を実現するセレクター

Weebit NanoのEran Briman氏

 Briman氏はEE Timesのインタビューの中で、「SkyWaterからの製品提供は、重要なマイルストーンだといえる。セレクターの分野における進展を遂げた直後に、このマイルストーンと技術資格の認定が続いた。われわれは最近、CEA-Letiとの協業により、ディスクリートチップに必要な高密度を当社のReRAMセレクターで実現する方法を披露した。標準的な材料やツールを使用しながら、将来のSoCに向けて、組み込みアプリケーションをより高密度なNVMに適合させることができる。これは、TSMCのように、ファウンドリーでセレクターを組み込みデバイスに統合できることを意味する。つまり、メモリアレイの縮小化が可能になるため、極めて重要な成果だといえる」と述べている。

 セレクターの問題を解決することは非常に重要である。実際にアクセスすべき特定のセルだけを確保して、他のセルは全て影響が及ばないように切断することができるからだ。組み込みReRAM設計ではこれまで、セレクターデバイスとしてトランジスタが使われてきたが、メモリビットのセル面積が増大してしまうため、ディスクリートチップに必要とされる高密度をサポートすることができなかった。この他にも、ReRAMのさらなる開発を進めていくための手法としては、3D XPointの構造/技術を適用したReRAMが挙げられる。チップ当たりのビット容量の向上やコストの最小化を実現することが可能だ。

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