量子コンピュータ向けの極低温配線技術を開発するオランダの Delft Circuitsは、「Cri/oFlex」と呼ばれる革新的な量子コンピュータ向けケーブル技術を開発した。製品の詳細と開発の狙いを同社CEOに聞いた。
量子コンピュータ向けの極低温配線技術を開発するオランダのDelft Circuitsは、南極点に設置した電波望遠鏡BICEPを使った重力波の観測プロジェクト「BICEPプロジェクト」に参加すると発表した。同社は、カリフォルニア工科大学にあるNASAのジェット推進研究所(JPL)やその他のプロジェクトパートナーを支援していく。JPLチームは、Delft Circuitsの高度なケーブルを、新しいカメラの一部として望遠鏡のクライオスタット(低温保持装置)に設置することを決定した。
JPLチームは、望遠鏡のセンサーを新しい熱運動インダクタンス検出器(TKID)に置き換えることも予定しているという。TKIDは量子力学の特性を活用し超伝導検出器で、インフラ要件が、量子システムで量子ビットを設定して測定するのに必要な要件と非常によく似ている。
近年、大規模な多国籍グループや研究者、スタートアップによる量子コンピューティングへの関心が高まっている。HPC(High Performance Computing)システムとしても知られる現在のスーパーコンピュータは、計算能力は高いが、一定レベルの複雑さを超える問題はまだ解決できない。
一方、量子コンピューティングのアプローチは、システムが使用する量子ビットが多いほど計算能力が高くなり、現在のHPCの限界を超えることが期待されている。
量子コンピュータは、個々の量子ビットを可能な限り安定させ、外部要因による影響を受けないようにする必要があるため、設計にはこれまでにない課題が伴う。量子ビットの実装に使用する技術の種類によっては、ノイズを可能な限り減らすために、絶対零度に近い温度を生成する必要がある場合が多い。そのため、量子コンピューティングハードウェアは通常、極低温希釈冷却装置内に配置される。
次に課題となるのが、低温の量子デバイスと、通常は室温で動作する制御電子回路を接続することだ。次世代量子プロセッサが1000個以上の量子ビットを組み込めるようになることを考えると、このプロセスには非常に複雑な配線が必要となる。
図1は、量子コンピュータに関する複雑な配線の一部を強調して示したものだ。通常の同軸ケーブルは、アドレス指定して数十個の量子ビットを読み取るには十分ではあるが、無視できないレベルの負担がかかる。そのため、省スペース化と、希釈冷凍機の伝導熱の低減という観点から、より高密度に相互接続する必要がある。
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