NXP Semiconductorsは、ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州最大規模のエレクトロニクス展示会「electronica 2022」(2022年11月15〜18日)で、電気自動車(EV)制御アプリケーション向けマイコンの新シリーズ「S32K39シリーズ」を発表した。今回、同社のグローバル製品およびソリューションマーケティング担当ディレクターであるBrian Carlson氏に製品の詳細を聞いた。
NXP Semiconductorsは、ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州最大規模のエレクトロニクス展示会「electronica 2022」(2022年11月15〜18日)で、電気自動車(EV)制御アプリケーション向けマイコンの新シリーズ「S32K39シリーズ」を発表し、デモを展示した。2つのトラクションモーターを制御可能で、同社が"電動化を未来に導く"とするこの製品の詳細について、今回、同社のグローバル製品およびソリューションマーケティング担当ディレクターであるBrian Carlson氏から話を聞いた。
NXPはArm Cortex-Mシリーズをベースとした車載向け汎用マイコン「S32K」ファミリーの新製品で、主にトラクションインバーター制御に向けたものだ。高速かつ高分解能の制御によって、EVの電動効率および航続距離向上の実現をサポートするとしている。Carlson氏は、「現在、自動車メーカーは多額の投資をしてEVプラットフォームの開発を進めている。新製品は、性能、統合、ネットワーキング、セキュリティ、機能安全などの各最新技術を搭載し、EVの心臓部であるトラクションインバーターの制御に最適化した」と語った。
下図はEV市場のトレンドとS32K39の特長をまとめたものだ。EV市場では、航続距離の増加やASIL Dなどより厳しい機能安全への準拠、信頼性、1〜4個までのモーターを搭載できる拡張性、ゾーンアーキテクチャへの移行、そしてコスト削減といったニーズが高まっている。S32K39はそれらの要求に応えるものだとしている。
S32K39の最大の特長は、モーター制御用のコプロセッサを2つ搭載し、1チップで2つのトラクションモーターを制御可能とした点だ。また制御周波数は200kHzと高速で、従来のシリコンIGBTに加え、車載次世代パワー半導体であるSiC(炭化ケイ素)およびGaN(窒化ガリウム)も利用できるという。Carlson氏は、「既存デバイスは1チップで1個のモーターしか制御できず、制御周波数も50k〜100kHzほどだった。S32K39は高い価値提案と機能を提供できる」と自信を見せた。
S32K39は320MHz動作の「Arm Cortex-M7」を4つ搭載(ロックステップ方式が1ペア、スプリットロック方式が1ペア)した、S32Kファミリーで最も高性能な製品で、「クラウドを利用したデータ解析や、車両の状態管理などの他アプリケーションも実行可能だ」と述べていた。
S32K39は最大6相のモーターをサポートし、「位相がずれても冗長性を確保でき、より高い信頼性が得られる」としている。また、モーター制御には195ピコ秒の高分解能パルス変調(PWM)を採用し、スムーズな加速を実現している。このほか、ソフトウェアレゾルバーを含むASIL Dへの対応や1〜4つまでのモーターに対応する拡張性、TSN(Time Sensitive Networking) Ethernetへの対応などを特長として挙げていた。
Carlson氏は、「当社の前世代品と比べ性能が50%向上したうえ、2つのモーター制御や高分解能PWM搭載、高度な統合を実現した。競合と比較しても圧倒した性能/機能を有しているといえ、EV用マイコンの先駆的製品だと考えている」と述べている。
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