メディア

「RISC-Vは不可避の存在」、RISC-V Summit 2022詳報歴史や現状、各社の最新開発動向まで(2/3 ページ)

» 2023年01月24日 11時30分 公開

25年には新車の10%に搭載、RISC-Vをけん引する車載市場

 最も話題に上がった市場の一つが、自動車市場だ。Andes Technology(以下、Andes)やMIPS、デンソーのグループ会社であるNSITEXEなど、さまざまなメーカーが提供する自動車グレードのコアが使われている。Redmond氏は基調講演の中で、「RISC-Vは2025年までに、新型自動車全体の10%に搭載される見込みだ」と予測している。

 欧州のRISC-VコアIPプロバイダーCodasipは、「自動車メーカーもRISC-Vを好んで採用するだろう。なぜなら、IPサプライヤーに頼ることなくRTLコードを検証して正式な検証手法を設計に適用できるからだ。メーカー各社は垂直統合設計を進めていく上で、コストや性能、電力などを最適化するためにカスタマイゼーションを利用するとみられる」と述べる。

 RISC-Vはカスタマイゼーション機能を備えていることから、組み込み設計での人気が高まっているというのもそれほど驚くことではない。例えばImperasは、設計検証の他、マルチベンダーIPのカスタム命令をサポート可能な垂直型プラットフォームツールを提供するメーカーだ。

 RISC-Vコアが最初に参入した市場は、NVIDIAやWestern Digitalのディープな組み込み設計分野だった。QualcommのManju Varma氏は、2022年に開催されたイベントの基調講演に登壇した際、同社が「Snapdragon 865」以降、自社製チップでRISC-V CPUコアを採用し、その出荷数量が、計6億5000万個を超えたことを明かした。

 また、Googleの経営幹部は基調講演において、「AndroidオープンソースプロジェクトのRISC-Vへの移植」をテーマとするプレゼンを行った。移植については、かつてAlibabaが既に試みているが、今回はGoogleの正式なプロジェクトだ。RISC-V上で検証や初期開発向けとしてAndroidを動作させる取り組みは順調に進んでいるが、Googleは、今後主流製品向けとするには、特定のアーキテクチャ機能が必要になると明言した。これにより、スマートフォンをはじめとするAndroid搭載の民生機器向けRISC-Vの市場が開かれることになるだろう。

 データセンターアプリケーション向けとしては、AlibabaやEsperanto Technologies、Ventana Micro Systems(以下、Ventana)などの製品がある。

Ventanaの「Veyron V1」、詳細が明らかに

 RISC-V Summitで最大の目玉となったハードウェア関連のニュースは、Ventanaがデータセンタークラスのチップレットプロセッサ「Veyron V1」について詳細を明かしたことだろう。8段パイプラインのスーパースカラー構造(アウトオブオーダー実行)を採用した、3.6GHz動作のCPUで、RAS(reliability, availability and serviceability)機能を搭載。AMDやArm、Intelなどの最新型サーバプロセッサに真っ向から対抗可能な性能を実現している。

 Veyron V1は、TSMCの5nmプロセス技術を適用して製造されており、最大16コアを搭載。CPUクラスタ当たり48MバイトのL3キャッシュを備える。半導体/システムメーカーは、複数のVeyron V1チップレットをセントラルメモリやIOチップと組み合わせることで、1ソケットに128のCPUコアを搭載したサーバプロセッサを構築することが可能だとしている。

 V1チップレットアーキテクチャは、AMDの「EPYC」プロセッサとよく似ているが、Ventanaの重要な相違点として、メモリやIOハブとのチップレット接続において超低レイテンシのインタフェース「BoW(Bunch-of-Wires)」が採用されているという点が挙げられる。BoWは、OCP(Open Compute Project)が物理インタフェース規格ODSA(Open Domain-Specific Architecture)のサブプロジェクトの中で開発した。並列インターコネクトであるBoWは、パラレルインタフェースをシリアルに変換する上で、AMDの「Infinity Fabric」のような高レイテンシのSerDes接続を使用しない。なお、Ventanaは、今のところはBoWを使用しているが、将来的にはUCIeに移行する予定だという。

 Ventanaはビジネスモデルとして、標準的なサードパーティー製メモリおよびIOハブを搭載した標準的なチップレットと、カスタムハブ搭載のV1チップレット、V1コアに対するIPライセンスの3つを提供する予定だとしている。V1は、競争力のあるクロック速度で優れたIPC(Instructions Per Cycle)性能を提供可能なRISC-Vコアになりそうだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.