発電機能を備え、独自に生成した電力で充電する「自己充電式」の電気自動車(EV)は、EVが抱える大きな課題を解決することが期待できる。今回、同技術の持つ可能性や課題について説明する。
既存の電気自動車(EV)は、その秘められた可能性をまだ実現できていない。今求められるのは、急進的な技術革命だ。そこで重要なカギとなるのが、完全に再生可能エネルギーだけで走行可能な自己充電式EVである。
EVは、気候危機の問題を解決できる可能性を大いに秘めている。しかしEV技術は、まだ重要な課題を複数抱えている。例えば、走行可能距離が短いことの他、充電に関する問題としては、充電ステーションの数に限りがあるために待ち時間が長いこと、さらに、充電に時間がかかることなどが挙げられる。また、非再生可能エネルギー源から電力を生成する、不十分な配電網に依存していることや、価格が高いこと、性能面の問題などもある。
しかし、このように消費者にとって悩みの種となっているEVの充電関連の問題については、自己充電式EVが解決してくれる可能性がある。
既存のEVには通常、電池の他にも、それをサポートする変換/充電回路が搭載されている。このような組み合わせの場合、自動車を外部の充電源に接続して、ある容量まで送電網から電力供給を受けなければならない。
一方、自己充電式EVは、発電機能を備え、独自に生成した電力で充電できるEVだ。自己充電式EVの大半は、外装に太陽電池を搭載したもので、継続的に電力を生成し、搭載電池を充電している。その絶対的基準は、使用する電力のほとんどを、送電網から外部充電するのではなく、内部で生成することができるという点にある。
自己充電式EVは一般的に、走行距離に対して必要なエネルギー量を最小化する設計が求められ、これは開発者の能力に大きく依存する。従って自動充電車は、既存のEVとは見た目が大きく異なる可能性がある。例えば、車輪が3つしかない場合や、空気力学を向上させるために車体形状が不規則であることなどが考えられる。
この他にも自己充電式EVを実現する重要な要素として、既存の鋼鉄や重金属の代わりに、炭素繊維やケブラーのような軽量かつ耐久性のある材料を採用することが挙げられる。また、このような自動車には、専用の太陽電池が必要だ。太陽電池そのものが車体の重量を増加させてしまわないよう、薄型かつ耐久性に優れていることが求められる。
自己充電式EVは、SFのような夢物語のように捉えられているかもしれないが、その技術は、大方の予想をはるかに超えて実現へと近づいている。
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