今回は、中国メーカーの最新スマートフォン「Xiaomi 12T Pro」や「vivo X90 Pro/Pro+」の解析結果を報告する。
2022年後半から2023年にかけてもユニークで新しいスマートフォンが続々と発売されている。「Google Pixel 7」シリーズやApple「iPhone 14」シリーズが大きな話題となっているが、中国メーカーからも新プロセッサやセンサーなどが搭載された新製品が次々と販売されているので今回は3機種を取り上げる。スマートフォンの主戦場がカメラ機能や充電時間、画像リフレッシュレートなどになって久しいが、依然進化が止まらない。やはりスマホは競争の源泉となっているのだ。
図1は2022年10月にXiaomiから発売された2022年フラグシップモデルの最後の機種「Xiaomi 12T Pro」である。2021年年末(事実上入手可能になったのは2022年1月)にQualcommの「Snapdragon 8 Gen 1」(Samsung Electronicsの4nmプロセスノードを適用)を採用した「Xiaomi 12」が発売され、2022年7月には、プロセッサを「Snapdragon 8+ Gen 1」(TSMCの4nmを適用)に切り替えた「Xiaomi 12S Ultra」が発売されている。
ほぼ同機能のチップを、Samsungの4nmからTSMCの4nmに切り替えたQualcommのモチベーションは、実際のシリコンを開封すれば、明らかになる。弊社ではSnapdragon 8 Gen 1とSnapdragon 8+ Gen 1の両シリコンを開封し、サイズや内部配置などをくまなく解析したレポートを発行済みだが、Samsungの4nmに比べてTSMC 4nmのシリコンはひと回り(曖昧な表現だが)小さいものになっている。小さいシリコンになればウエハーからのシリコン取得数が増える。多く取得できればそれだけコストを下げられる。他メーカーでも、2022年後半に発売された機種には、TSMC 4nmのSnapdragon 8+ Gen 1を採用した製品が増えている。
チップの取得数だけでなく、シリコンサイズが小さくなることのメリットは他にも多い。ミリメートル単位で縮小できた場合、基幹となるクロックや電源も短くなるので、高速化に寄与しやすい。公開されている動作周波数もTSMC 4nmの方が6%以上高速化されている(トランジスタ性能に依存するが)。図1のXiaomi 12T Proは、Xiaomi 12S Ultraに続きTSMC 4nm適用のSnapdragon 8+ Gen 1が採用されている。一番の特長は、「史上初」とされる200M(2億)ピクセルのCMOSイメージセンサーをメインのワイドカメラに採用したことだろう。1億800万画素のCMOSイメージセンサーは、Xiaomiが2019年に発売した「MI NOTE10 Pro」以降、多くの製品で採用されているが、2022年、約2倍となる2億画素のCMOSイメージセンサーの採用が、Xiaomi 12T Proで始まった。
図2はXiaomi 12T Proの内部の様子である。メイン基板には3眼カメラとサブ基板、さらにアンテナ基板が接続されている。
メイン基板とサブ基板には図2以外にも2本のフレキシブル配線が接続されていて、1本はメイン基板からサブ基板を経てディスプレイに接続され、もう1本はUSB-C端子に接続されている。メイン基板にはプロセッサなどの主要半導体チップが並び、カメラがおよそ半分の面積を占めている。カメラはOIS(Optical Image Stabilizer)構造で、コイルとマグネットがレンズを囲む。OIS機能によってレンズが上下に動き、焦点を合わせているわけだ。レンズとOIS部を取り外すと2億画素のCMOSイメージセンサーが現れる。詳細写真は掲載しないが、SEMなどを用いて素子レベルでの解析を行ったところ、4×4素子を基本とした構造になっていることが分かった。
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