ベルギーの研究機関imecの持続可能半導体技術/システムプログラム担当マネジャーであるCedric Rolin氏は、米国EE Timesの取材に応じ、「われわれは次世代集積回路開発に当たり、環境的に持続可能な世界半導体製造プロセス実現に向けて注力している」と述べた。
世界最大規模の半導体技術研究所であるベルギーのimecでは、次世代集積回路の開発が進められている。同研究所の持続可能半導体技術/システムプログラム担当マネジャーであるCedric Rolin氏は、米国EE Timesの取材に応じ、「われわれは開発に当たり、環境的に持続可能な世界半導体製造プロセス実現に向けて注力している」と述べた。
Rolin氏は、「imecは、次世代の半導体開発を中核事業とし、半導体業界において巨大なエコシステムを確立している。現在、このエコシステムとわれわれの次世代プロセス関連の知識とを活用し、プロセス全体のあらゆる側面を集合的に見る方法について検討しているところだ。性能やコストだけでなく、環境面でも変化を実現していきたい。これは、コアプログラムに追加する要素の一つだが、非常に重要であり、誰もが参加できるよう個別プログラムとして始動させた」と述べる。
Rolin氏によると、持続可能半導体プログラムは現在、「評価」と「改善」の2つの柱をベースに構成されているという。
1つ目の柱では、集積回路を製造することによって、例えばCO2排出量やエネルギー使用量などが、環境にどの程度の影響を及ぼすのかを評価する。その一環として、影響の大きいプロセスの特定も行うという。
そして2つ目の柱では、特定のプロセスを改善し、環境への影響を軽減する。Rolin氏は、「その実現に向け、imecの300mmウエハーの研究開発(R&D)工場でプロセス開発を集中的に実行していく」と述べる。
気候変動の観点から見ると、半導体工場が消費する電力の発電や、大気中への温室効果ガスの直接排出などが、最も影響力が大きい。
Rolin氏は、「工場の消費電力量を削減するには、エネルギー消費量の高いプロセスを最適化し、工場からの温室効果ガスの直接排出量を削減する必要がある。このようなガスには、ドライエッチングやチャンバーの洗浄で使われるフッ素化ガス、化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition:CVD)で大量に使われる亜酸化窒素などがある」と述べている。
「imecは、2020年の国際学会IEDMで発表された論文をベースとして、ジェネリックモデルを開発した。この論文は当時、高い関心を集め、新プログラムが誕生するきっかけとなった」(Rolin氏)
同氏は、「この論文は大きな成功を収め、imecのパートナーらは、『非常に重要な取り組みであるため、さらにその先を見てみたい』という声が上がった。こうして今回のプログラムが誕生したのだ」と述べる。
現在のパートナーとしては、システムメーカーであるAppleやAmazon、Microsoftの他、サプライヤーであるASM InternationalやASML、栗田工業、SCREEN、東京エレクトロンなどが名を連ねる。
Rolin氏は、「最初に関心を寄せたパートナーは、ファブレスメーカーだった。2030〜2050年にかけて実質ゼロ排出を実現するという野心的な目標を掲げていたからだ。また半導体製造装置メーカーも、環境負荷低減を目指し、関心を示している」と述べる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.