MLCommonsのエグゼクティブディレクター、David Kanter氏は、「データの標準規格も忘れてはならない」と述べる。MLCommonsは、ベンチマークや公開データセット、ベストプラクティスを通じてMLを研究分野から成熟した産業に成長させるために設立されたコンソーシアムである。
Kanter氏は、音声のMLモデルの構築を例に挙げ、「開発者が常に使用する標準化された音声入力がないため、誰もが異なるパイプラインで、異なる方法で処理を行っている」と指摘する。
同氏は、「これは、ターゲットによっても異なる。tinyMLについて言えば、前処理の一部を実行できるオンデバイスコンポーネントがある場合もあれば、ない場合もある。このように、標準規格が非常に役立つ場面はたくさんある。これは、ソフトウェアに豊かな歴史がある分野の事例だが、データ側にはそれがないため、直感と筋力を鍛える必要がある」と述べている。
パネリストらは、「AIアプリケーションの2つの部分(ソフトウェアとデータ)は開発において釣り合いが取れていない。コードが“ほうれん草を食べた後の筋骨隆々としたポパイ”のようになっても、MLトレーニング情報はひ弱なポパイのままだ」と表現していた。
エッジデバイスのML向け開発プラットフォームを手掛けるImagimobのCEO、Anders Hardebring氏は、「最大の課題は、豊富な注釈付きで高品質な、十分な量のデータを収集できることと、そのためのソフトウェアを備えていることだと考えている」と述べる。
Hardebring氏は、「ポパイの筋肉があろうとなかろうと、ソフトウェア開発は常に、新しいハードウェアより遅れている」と指摘する。
カナダの半導体企業であるUntether AIのソフトウェアエンジニアリング担当バイスプレジデント、Alex Grbic氏も、Hardebring氏に同意している。Grbic氏は、「斬新なアーキテクチャを活用するために、こうした新しいアーキテクチャが登場する理由は、従来のアーキテクチャでは不可能な特定の性能要件を満たすためである。ただし、それらは複雑だ」と述べる。
同氏は、「TensorFlowのようなフレームワークを使用するUntether AIの顧客は、空間アーキテクチャに必要な基本的な並列プログラミングを行いたくないと考えている」と付け加えた。
「そして、その場合、それを利用するためにソフトウェアに大きく依存する。当社は、そうしたソフトウェアを提供している」(Glbic氏)
標準規格の策定が進められる中、Untether AIのソフトウェアはハードウェアを利用しやすくするとともに、より優れたパフォーマンスを実現している。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.