2023年4月、IT技術関連の国際見本市「InnoEX(イノエックス)」が香港で開催された。香港は近年、アジアにおける金融業と貿易の中心地という地の利を生かし、技術革新のハブとしての地位を強化する戦略を打ち出している。InnoEXでは、それを垣間見ることができた。
最新のIT技術を展示する国際見本市「InnoEX」が、2023年4月11〜15日にかけて香港のHong Kong Convention and Exhibition Centerで開催された。InnoEXに加え、さまざまな電子機器を展示する「香港エレクトロニクス・フェア(春)」と、照明器具の展示会「香港インターナショナル・ライティング・フェア(春)」も同時に開催されている。
主催者の一つである香港貿易発展局が同年4月末に発表した最終統計によれば、これら3つの展示会には、20の国/地域から約3000の企業や組織が出展し、米国やインドを含む約160の国/地域から6万6000人を超える来場者が参加した。会期中に行われた商談は、オンラインを含め3000件以上に上るという。
香港貿易発展局のDeputy Executive Directorを務めるSophia Chong氏は報道陣とのブリーフィングで、「古くから金融業で発展してきた香港は、資金を集めやすい場所である。さらに、アジアにおける貿易の中心地であり、さまざまな製品、テクノロジー、サービスの流通が盛んだ。こうした特長を生かし、香港はICT(Information and Communication Technology)の中心地として発展している」と語り、InnoEXが香港で開催される意義を強調した。
同氏によれば、今回の展示会はわずか6カ月という短い期間で準備したという。「本来、これだけの規模の展示会は約1年近くかけて準備する。今回はその半分の時間しかなかったが、香港入境の規制緩和のタイミングにあわせ、技術の商用化が容易になるよう努めることがわれわれの使命と捉え、懸命に準備を進めた」(同氏)
Chong氏が強調する通り、香港には「金融」「貿易」という2つの強みがある。香港の貿易で特徴的なのが、輸入額、輸出額ともにエレクトロニクス分野の比率が高いということだ。具体的には、電気機械、電化製品、電子部品などが多数を占める。香港貿易発展局の調べによると2021年における香港の輸出額の72.6%は、エレクトロニクス関連製品だった。ただし、エレクトロニクス製品の製造は、コストを抑えるために中国本土で行うことがほとんどだ。そのため、「製造拠点はないが、R&D拠点が多く集まる」というのも、香港の特長の一つになっている。
こうした特色を生かし、香港政府は近年、“技術革新のハブ”としての地位を向上する政策を打ち出している。スマートシティー戦略をはじめ、産官学連携でハイテク関連の研究を行う組織の設立や、ハイテク関連のスタートアップの支援などを強化してきた。その成果は、金融業にも表れている。香港貿易発展局の調査によれば、600社を超えるフィンテック企業が香港で事業を展開しているという。そのうち5社はユニコーン企業で、2019〜2021年で合計18億米ドルの資金を調達した。実店舗を持たない仮想銀行(バーチャル銀行)が8つ、仮想保険業者が4つ、香港で操業するなど、仮想サービス分野でのビジネス展開も増えつつある。
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