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コロナ禍で半導体商社業界に起きた「地殻変動」とはアフターコロナの調達網を探る(1)(1/2 ページ)

アフターコロナの調達網は、どう変わるのか――。本連載では、半導体/電子部品通販サイト「CoreStaff ONLINE」を運営するコアスタッフの社長を務める戸澤正紀氏と、半導体/電子部品メーカーのトップとの対談を通して、コロナ禍後のエレクトロニクス商社の在り方や、顧客の購買活動を探る。本稿では、そのプロローグとして、コロナ禍を通して、顧客の購買活動がどのように変わってきたのか、商社の役割がどうあるべきかを戸澤氏に聞いた。

» 2023年05月22日 10時30分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

コロナ禍でカオスに陥ったサプライチェーン

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックで、エレクトロニクス系部品の供給網は大混乱に陥った。自動車の生産ラインが次々にストップし、産業機器をはじめ、給湯器のような人々の日常に関わる製品までが品薄となり、「半導体」の存在はにわかにクローズアップされるようになった。

 2022年後半には供給難がだいぶ落ち着いてきたものの、一部の製品は“品薄”が続いている。その一方で、供給過剰になりつつある部品も表れている。

 こうしたコロナ禍による供給網の混乱について、半導体/電子部品の通販サイト「CoreStaff ONLINE」を運営するコアスタッフの社長を務める戸澤正紀氏は「20年以上、半導体業界に携わってきた中で最も大きなインパクトがあった」と語る。

 コロナ禍の前後で、供給網と調達に対する業界の意識はどう変わったのか――。そしてコロナ後(アフターコロナ)の調達網や、エレクトロニクス商社の役割はどうあるべきなのか。部品の調達担当者は、何を意識するべきなのか。本連載では、戸澤氏と、複数のエレクトロニクス企業の対談を通して、それらを探る。

 まずは、そのプロローグとして、戸澤氏に話を聞いた。

コアスタッフの社長を務める戸澤正紀氏 コアスタッフの社長を務める戸澤正紀氏

コロナ禍前後で調達網はどう変化したのか

――コロナもだいぶ落ち着き、2023年5月5日(スイス時間)にはWHO(世界保健機関)がCOVID-19をめぐる緊急事態宣言の終了を発表しました。日本で部品不足が露呈し始めた2021年からの約2年間を振り返ってください。

戸澤正紀氏 20年以上、半導体業界に携わってきたが、その中でも最も大きなインパクトがあった。部品のサプライヤーと、それを購入する顧客の間に立つのがエレクトロニクス商社の役割だが、商社としての価値があらためて問われた2年間だったのではないか。

 特に、基本的にサプライヤーからのみ部品を調達する従来のエレクトロニクス商社(以下、トラディショナルな商社)は、大変な苦労を強いられただろう。リスクを負って、サプライヤーに先行発注した商社も多数ある。それでも、顧客が部品調達に苦心する状況が続き、顧客が代替手段を検討するようになった。そこでフォーカスされてきたのが、自社で多くの在庫を保有しオンライン通販サイトで販売する、当社のような「カタログディスティ」(ディスティ=ディストリビューターの略)の存在だ。残念ながら、日本ではカタログディスティはまだ数が少なく、知名度も低い。だが海外では既に一般的になっている商社のスタイルだ。

 とはいえ、当社も、コロナ禍の部品不足においては、自社の在庫だけでは全く供給が追い付かず、世界中の調達網を活用して部品を探し出していた。全てのエレクトロニクス商社にとって、このような調達力が問われた2年間だった。

――コロナ禍で浮き彫りになった、日本のエレクトロニクス商社の課題は何だとお考えですか。

戸澤氏 一つはプレイヤー、つまり商社の数ではないか。米国のエレクトロニクス商社は、トラディショナルな商社とカタログディスティを合わせて大手5社程度にまとまっている。一方で日本は、トラディショナルな商社だけでも200社は下らない。国土の広さとエレクトロニクス業界の市場規模を考慮すると、日本は商社の数が非常に多い。1社1社の発注の規模が小さくなるので、サプライヤーに対する“発言権”がどうしても弱くなる。そうなると、今回のコロナ禍のような有事の際に、商社がサプライヤーを動かすことができなくなる。

 もう一つは、エレクトロニクス商社としてのスキルをどのように向上して、この先も深堀りしていくかだ。コロナ禍のリモートワークによって、日本のトラディショナルなエレクトロニクス商社は、「顧客企業の調達担当者/バイヤーのところに通い、直接、要望を聞きながら交渉し、部品を提供していく」という従来のアプローチが難しくなってしまった。

 こうした日本のエレクトロニクス商社の現状は、どうにか変えていく必要がある。

――日本は、部品価格の高騰を最終製品の価格に転嫁できないから買い負けているだけで、実は、世界の他の地域には部品が提供されていた、という話も聞きました。

戸澤氏 その通りで、価格を上げてでも部品を購入すればいいという判断が日本はできなかった。さらに、欧米に比べると、市場が小さいというのも買い負けていた理由の一つだ。今後のポテンシャルを含めた絶対的な競争力が低く、バイイングパワーが弱い。さらに、部品調達において中長期のPO(purchase order)の枠を確保する、という発想が日本の会社にはないことも、一因だったと考えられる。

――コロナ禍を経る中で、サプライヤーや顧客の意識に変化はありましたか。

戸澤氏 とにかくモノがない、モノを調達できない、という状況だったので意識は大きく変わったのではないか。それによって、サプライヤー、商社、顧客、これら3者の“力関係”が変わってきた。値上げ交渉ができる、1年分のPOを発行する、といった、この20年間では見られなかった、大きな地殻変動が起こったと考えている。

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