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コロナ禍で半導体商社業界に起きた「地殻変動」とはアフターコロナの調達網を探る(1)(2/2 ページ)

» 2023年05月22日 10時30分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]
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アフターコロナで起こりつつあるパラダイムシフト

――コロナ禍が落ち着き始めた今、アフターコロナにおける商社ビジネスの環境の変化については、どうお考えですか。

戸澤氏 アフターコロナで大きく感じたのは、顧客において価値観のパラダイムシフトが起こったということだ。

 コロナ以前なら、顧客にとって最も重要なのは「価格」だった。それが、コロナ中もしくはここ最近は、「調達できること」が最重要になってきた。「納期」と言い換えてもいいかもしれない。そしてもう一つが「リソース」だ。いかに省力化し、効率よく調達業務を行うか、ということだ。このコロナ禍で、特に調達担当者は大変な苦労を強いられた。就業環境の厳しさによる離職や、それに伴う人手不足などによって、大手メーカーですら購買や調達の機能が崩れてしまったケースもある。それ故、リソースの重要度が高くなってきた。

 総じて、値上げ交渉や、省力化に向けた取り組みがしやすくなった。これは、商社にとっても、生産性向上の観点でとてもプラスになると考えている。

 さらに、サプライチェーンが寸断した際にもある程度カバーできるように、半導体の在庫でも「備蓄」を持つ、というニーズが生まれてきている。例えば、トヨタ自動車の「ジャスト・イン・タイム」のような生産方式は、平時であれば抜群に機能する方式でも、コロナ禍のような有事の場合にはぜい弱であることが分かってしまった。

――カタログディスティについては、いかがですか。

戸澤氏 カタログディスティについては、顧客からの期待値が上がってきた。試作時だけではなく、量産時もカタログディスティで購入したいというニーズが出ている。カタログディスティは、非常に幅広い製品に対して在庫を保有するというリスクテイクができるので、特に少量かつ不定期で調達するような顧客に対しては強みを発揮できるのではないか。

アフターコロナの商社の役割とは

――アフターコロナの商社の業界は、どうなっていくと予想していますか。

戸澤氏 先ほど述べたように、あまりにプレイヤーが多すぎると、対サプライヤーにおける各社の交渉力が弱くなってしまう。ある程度は集約していかないと、日本が買い負けてしまうことがコロナ禍で明確に分かってしまった。特定のプレイヤーが強くなりすぎるのも良くないが、従来の付加価値を出し続けることが難しくなる中、商社間の生存競争は当然進むと思われる。

――アフターコロナにおけるコアスタッフの戦略についてお聞かせください。

戸澤氏 コロナ禍でカタログディスティへの注目度は高まったが、日本の顧客がすぐに米国のカタログディスティを活用することは、言語や支払い方法の違いといった面で、なかなかハードルが高い。特に、日本の手厚いサービスに慣れていると、余計に難しいだろう。そうなると、アナログとデジタルの中間にある「ハイブリッド」が求められると考えている。それこそが、当社が目指すものだ。コアスタッフは、コアスタッフオンラインというデジタルのプラットフォーム(通販サイト)を持つカタログディスティではあるが、100%日本企業で、私自身が丸文出身ということもあり、日本のエレクトロニクス商社ビジネスのことは熟知している。トラディショナルな商社とカタログディスティ、両方の強みを持つ「ハイブリッド」な商社として、存在価値を向上していきたい。

――アフターコロナでこそ発揮するべき商社の力とは何でしょうか。

戸澤氏 まずは、顧客に応じたカスタマイズを実現する力ではないか。今後は、顧客から求められる価値が多様化していくだろう。一定のレベルまでは、“金太郎あめ”のような画一的なサービスでも顧客をサポートすることはできるが、それよりも深い関係を顧客と構築したい場合は、やはりカスタマイズが不可欠になる。ここは、欧米の商社が苦手な部分でもある。

 日本のカタログディスティとして当社は、サービス全体の2〜3割ほど、カスタマイズできる領域を残している。それによって、トラディショナルな商社に近いサービスを提供できる。デジタルプラットフォームを持っていれば、こうした柔軟なアプローチを取りやすい。

 もう一つは、情報を提供する力だ。製品の備蓄についていえば、どの製品を備蓄すればいいのか、その情報をいかに提供できるかがカギになる。顧客としては、自分たちが調達している部品のうち、どの部品を備蓄すればいいのかを見抜きたい。われわれは、B2B(Business to Business)市場に特化し、幅広い製品を幅広いユーザーに販売しているので、市場の傾向が見える。どの製品がどのくらい購入されていて、発注から入荷まで現在のリードタイムがどのくらいなのか――。顧客が必要とする情報は、こうしたデータに含まれていて、それをわれわれは持っている。今後は、このような情報をいかに提供できるかというのが重要な要素になるだろう。

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