東北大学、巨大な磁気抵抗を示す磁性材料を発見:5Kで磁気抵抗比は1000%以上
東北大学は、巨大なトンネル磁気抵抗効果を示す準安定の磁性材料を発見した。開発した材料素子は5K(−268.15℃)で磁気抵抗比が1000%以上となった。
東北大学材料科学高等研究所の一ノ瀬智浩研究員(現在は産業技術総合研究所の研究員)と水上成美教授は2023年6月、巨大なトンネル磁気抵抗効果を示す準安定の磁性材料を発見したと発表した。開発した材料素子は5K(−268.15℃)で磁気抵抗比が1000%以上となった。
トンネル磁気抵抗素子は、MRAM(磁気抵抗メモリ)や磁気センサーの主要な構成素子であり、磁気抵抗比が大きいほど優れた素子といわれている。研究グループはこれまで、コバルトマンガン合金に着目して研究を進めてきた。そして、2020年に準安定の体心立方結晶構造コバルトマンガン合金を用いた素子を開発した。
さらに今回は、コバルトマンガン合金にわずかな鉄を添付した準安定体心立方結晶構造のコバルトマンガン鉄合金を開発するとともに、スパッタ法や加熱プロセスを用いて、高い磁気抵抗特性を備えた素子を作製した。この素子の磁気抵抗比は室温で350%を示し、5Kでは1000%を超えることが分かった。
左(a)はトンネル磁気抵抗素子と磁気抵抗の模式図。右上(b)は準安定体心立方結晶構造コバルトマンガン系合金の結晶模式図。右下(c)はコバルトマンガン系合金の熱力学的安定相の1つである面心立方構造の模式図 出所:東北大学
コバルトマンガン鉄合金における熱力学的に安定な結晶構造 出所:東北大学
これまで、巨大な磁気抵抗を示す材料としては、「鉄系合金」や「ホイスラー型磁性規則合金」が知られている。研究グループは、今回開発したコバルトマンガン鉄合金を「第3のトンネル磁気抵抗素子磁性合金」と位置付けている。
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