NTT コミュニケーション科学基礎研究所が主催するコミュニケーション技術に関するイベント「オープンハウス2023」では、生徒の“個性”に合った問題を出題する教育AIや、磁気作動式ピンディスプレイが展示された。
NTT コミュニケーション科学基礎研究所は2023年6月1〜2日、同研究所が研究しているコミュニケーション技術を展示するイベント「オープンハウス2023」を開催した。2023年5月29日には、都内で記者説明会が開かれ、展示内容の一部が紹介された。
同社は、生徒の回答傾向から、AI(人工知能)が初見の問題の正答率を分析/予測し、生徒の“個性”に合った問題を出題する技術「Monotonic Variational AutoEncoder(MVAE)」を展示した。伸ばしたい能力と当該生徒の能力を比較した上で、正答率の高い問題を出題し、「正解」を重ねることで学習意欲を高める狙いだ。
MVAEは、生徒の回答状況を「正解=1」「不正解=2」「回答待ち=?」の3通りで記録し、事前に設定しておいた「潜在変数」(問題の回答に必要な能力)と照らし合わせて分析し、生徒が「どんな問題に強いのか」(個性)を導き出す。問題は、当該生徒と似た個性を持つ生徒の正答率を目安にして出題される。
基準となる「正答率」は、事前に設定することができる。担当者によると、「適切な正答率は現在研究中だ。現状の想定では、75〜85%が最適値だと仮定して試験を行っている。しかし、実際に正答率を75%に設定してやってみたところ、4問に1問間違えるというのはなかなか心にくるため、今後も調整が必要だと考えている」という。
MVAEは、潜在変数を元に分析を行っているため、英語/算数/社会/体育など、言語や教科を問わず横断して分析できる。また、MVAE利用者は、他の利用者との相対的な立ち位置をシステム上で確認できる。
出題する問題や潜在変数のデータは、NTTコミュニケーションズが提供する英語学習サービス「English 4skills」で取得済み(2023年からデータ取得を開始)のものを使用する他、随時追加していく予定だ。既に、同社グループ内で実証実験をしていて、2023年3月までは国家プロジェクトとして高校生40〜50人が試している。
担当者は、研究の背景について「個別学習では、生徒(の学力)に合わせた問題を利用することが大切だ。しかし、どんなに評判のいい参考書/問題集でも、生徒の学力によっては、簡単すぎて得るものが少なかったり、難しすぎて学ぶ意欲が低下したりする可能性がある。生徒のやる気を引き出し、個別学習の効果を高めるためにMVAEを研究している」と説明した。
今後については、「個別の教科で最適な学習方法については、大手教材メーカーなどの経験や知見に分があると考えている。NTTは、教科を横断して取得/分析したデータから導き出した“個性”によって個別学習を効率化することで生徒の学力レベルの向上に貢献する。市場の反応を見ながら、数年以内には、NTTグループのサービスとして一般に提供開始したい」(担当者)と語った。
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