OMDIA シニアコンサルティングディレクターの南川明氏は、半導体市場やマクロ経済が今後、各国のグリーン関連投資や生成系AIの普及に伴うサーバ投資などにより、右肩上がりに成長すると予測した。
OMDIA シニアコンサルティングディレクターの南川明氏は2023年6月22日、同社主催の半導体市場動向に関するセミナーイベント「Global Semiconductor Day Summer 2023」に登壇し、これからの半導体市場をけん引するトレンドや、日米中の経済予測について語った。
南川氏はまず、生成系AIの「ChatGPT」が半導体市場に与える影響を語った。
ChatGPTは、2022年11月の公開から2週間で約100万人、2カ月で1億人のユーザーを獲得した。ChatGPTを含むGPTモデルの商用化に必要なGPUの数は、3万個を超えると予想されていて、NVIDIAの「NVIDIA A100」以降が使用されるといわれている。GPUのチップサイズを最大の800mm2とすると、12インチウエハーで1枚あたり約40個(歩留まり50%と仮定)製造できることになり、ウエハー枚数では750枚が必要になる。
同氏は、「生成系AIは、3年後にはデータセンター活用用途の約20%を占めるまでに発展し、プロセッシングパワー基準では約10倍になるといわれている。この需要を賄うためには、データセンターの数を現状の1.7倍に拡大する必要があるため、今後、大規模な投資が行われていくだろう」と述べた。
同氏によると、2023年以降の半導体市場は、政府のインフラ投資がけん引するという。
半導体市場は、2001年から2016年ごろまではPC/スマートフォンなどの個人消費の増加に起因して成長してきた。しかし、2017年ごろからは、個人消費に加えてDX(デジタルトランスフォーメーション)やカーボンニュートラル政策など、政府のインフラ投資による半導体の消費が増加している。
環境対策においては、2021年1月時点で、日本を含む124カ国と1地域が2050年までにカーボンニュートラル実現を表明している。今後の半導体市場について、南川氏は「各国政府が、カーボンニュートラル実現に向けた方針を打ち出している。しかし、2019年から2022年までは、新型コロナウイルスの影響やロシアのウクライナ侵攻の影響によって、何も進展していないに等しい。2023年以降は、政府によるインフラ投資が増え、半導体市場も成長していくだろう」と語った。
グリーン関連の投資額は、「各国/地域によって期間は異なるが、世界全体としては5年間で500兆円、年平均で100兆円に上る」(同氏)という。そのうち半導体への投資に充てられる金額について同氏は、「年平均100兆円のうち、電子機器に割り当てられる金額が50%の50兆円とすると、電子機器の半導体搭載係数が約10%のため、半導体への投資は年間5兆円ほどの計算となる。現在の半導体世界市場の規模が約50兆円であることを考えると、約10%の上乗せとなる。主な投資先としては、パワー半導体/アナログ半導体/センサー関連で年間3兆円ほどを占めるだろう」と説明した。
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