コアスタッフは2023年7月5日、コロナ禍以後の半導体/電子部品業界の見通しと課題、同社の今後の事業戦略についての説明会を開催。社長の戸澤正紀氏が登壇し、オンラインでの販売と対面での営業をハイブリッドで行う半導体専門商社という視点から半導体/電子部品業界の現状を分析した。
コアスタッフは2023年7月5日、コロナ禍以後の半導体/電子部品業界の見通しと課題、同社の今後の事業戦略についての説明会を開催した。
同社は半導体/電子部品の通販サイト「CoreStaff ONLINE」を運営するカタログディスティ(カタログ商社)だ。同サイトで自社在庫を販売するほか、顧客の手元で余剰となっている部品の買い取りや代理販売を行う余剰在庫削減事業、顧客が短納期での調達を必要とする部品を探して販売する緊急調達事業などを行っている。説明会には社長の戸澤正紀氏が登壇し、オンラインでの販売と対面での営業をハイブリッドで行う半導体専門商社という視点から半導体/電子部品業界の現状を分析した。
業界全体の市況感として、半導体不足については「一部を除いて解消してきたが、電源モジュールは部品数が多いことからいまだに納期が1年ほどとなっている。パワー系デバイスも、SiCに対しては投資が進んでいるがIGBTには新たな設備投資がないことから長納期のままとなっている」と説明。「一部でも足りない部品があると顧客が製品を製造できないため、他の部品の在庫消化が進まない」と分析した。半導体業界の市場縮小傾向については「半導体製造装置などのB2B(Business to Business)製品では2023年3〜5月が底だったと見ている。2023年7月から需要が回復するという予測が多かったが、製品によってすぐに回復するものとそうでないものがあるため、全体ではV字回復にはならず徐々に上がっていくのではないか」と見解を述べた。また、従来は、市場縮小傾向の時期は業界で一斉に投資を絞ることが多かったが、今回は極端な動きはないという。
「半導体関係者全体が1年単位ではなく4〜5年単位のマクロ視点に転換した。市場が縮小している状況でも回復後の成長に向けた投資を継続している」(戸澤氏)
戸澤氏は、コロナ禍による半導体業界の大きな変化として「顧客側の値上げ受け入れ」を挙げた。深刻な半導体不足の中で価格よりも納期の短さ、入手のしやすさを優先し、結果的に値上げを受け入れた顧客が多かったという。また、半導体業界は現在プレイヤーが減少していく局面にあると指摘。メーカー、商社ともに独自の付加価値を提供しにくいためM&Aが加速しているとした。
今後の需給バランスの回復時期については、想定される4つのシナリオを挙げた。1つ目は2023年夏から秋に回復するというもの。不足感の強い時期に顧客が二重に発注していた部品の在庫消化が順調に進み、半導体メーカーへの発注が回復する場合だ。2つ目は2023年冬から2024年春。在庫消化が2023年後半まで続き、その後は再度需要が回復する場合だ。3つ目は2025年以降。1つ目、2つ目のシナリオ同様に需要は回復するものの、2021〜2022年に新設された工場の新生産ラインによって供給量が増え、供給過剰の状態となることを想定した。4つ目は2026年以降。需要の回復が遅れたまま供給キャパシティーのみが増える「ワーストケース」(戸澤氏)だ。
戸澤氏は、今後の国内半導体業界を取り巻く環境の変化についても分析した。マクロな変化としては「国内生産への回帰」「地政学的な日本の重要性の向上」「政府からのバックアップ強化」「デフレの解消」「少子化の進行」を挙げる。国内生産への回帰は、円安による国内製造コストの相対的な低下や、情勢の変化によって海外拠点での製造のリスクが高まったことが理由だ。政府から半導体業界へのバックアップについては「ここ数年、今までにないレベルで強化されている」とした。
ミクロな変化としては「プレイヤー減少による半導体商社の寡占化の進行」「カタログディスティの浸透」「国内半導体メーカーの連携強化」「主要外資半導体メーカーの成熟化」「グローバルカタログディスティの巨大化」を挙げる。カタログディスティの浸透について戸澤氏は「コアスタッフもカタログディスティの1社。半導体/電子部品をWeb上で購入することが徐々に浸透している」と述べた。主要外資半導体メーカーの成熟化については「日本の商社にとって最大の脅威だ。もともと外資メーカーは日本市場への理解度が低く、ガイド役として商社と連携していたが、理解が深まってきたことでむしろ商社の存在が障壁となってきた」と説明。グローバルカタログディスティの巨大化については「とにかく在庫を大量に持っていて、顧客への輸送期間が短く、かつ価格も安い。日本の半導体商社は気付かないうちに(顧客を)奪われている」と危機感を示した。
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