コロナ後の半導体市場、商社が語る「4つのシナリオ」:需給バランスの回復はいつなのか(2/2 ページ)
戸澤氏はこうした業界の環境変化を踏まえて、コアスタッフの取り組みや戦略を紹介した。
全体的な戦略はメーカーと顧客のハブになるというものだ。戸澤氏は半導体/電子部品メーカーと顧客の関係性について「近年はメーカー側の力が強くなり、購買側の中小企業が交渉力を失ってきている。中小企業がそれぞれ別の代理店を介すると金額もまとまらず、交渉力も高まらない」と指摘。「多くの中小企業の購買金額を集約することでメーカーに対しても一定の交渉力を持つことができる」とし、そのハブの役割を担うことを目指すとした。
コアスタッフの全体戦略[クリックで拡大]出所:コアスタッフ
この戦略に基づく取り組みが2024年稼働予定の新物流センターの建設だ。長野県佐久市に建設中で、延べ床面積は約1万5000m2。総工費は約50億円で、戸澤氏によると「過去最大規模の投資をした」という。完成後の活用方法としては、保管スペースが増えるため従来の販売業務の拡大に加え、自社内で物流業務を維持できない企業からの物流受託の推進、バッファー在庫の保有といった顧客の在庫リスクを負担する高付加価値サービスの展開ができると見込む。
戸澤氏は「資金力のある米国の巨大半導体商社などには、普通のやり方では敵わない。日本企業は日本の閉鎖性に守られるだけでは今後が厳しい。われわれも自社の強みを生かしていく」とした。
2024年稼働予定の新物流センター概要[クリックで拡大]出所:コアスタッフ
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