STマイクロエレクトロニクスは「TECHNO-FRONTIER 2023」で、同社の32ビット汎用Armマイコン「STM32G4」およびAI開発ツール「NanoEdge AI Studio」を活用して、洗濯機内の衣服重量を自動推定するデモを展示した。
STマイクロエレクトロニクス(以下、STマイクロ)は、「TECHNO-FRONTIER 2023」(2023年7月26〜28日/東京ビッグサイト)に出展し、同社の32ビット汎用Armマイコン「STM32G4」を使用して、洗濯機内の衣服重量を自動推定するデモを展示した。
このデモは、「汎用マイコンでも推論できる」ことを示すもの。具体的には、STマイクロの組み込みAI開発ツール「NanoEdge AI Studio」で、モーター制御時の電流値を基に衣服の重量を推論する機械学習ライブラリを作成し、それをSTM32G4で動作させていた。このライブラリは非常に軽量であることが特長で、そのため汎用マイコンのSTM32G4でも動かすことができる。ライブラリの入力値としてモーター制御時の電流値を使うので、衣服の重量を測るためのセンサーなどは必要ない。
デモでは、洗濯機の中に500gの重りを入れ、STM32G4のメモリ容量を10Kバイト使って推定した。結果、1回目は480g、2回目は494g、3回目は497gと高い精度で推定が行われた。「今回のデモでは測定誤差を±100g以下に抑えていて、従来のセンサーなどを使った重量推定より精度が高い」(担当者)。このように高い精度で衣服の重量を推定することは、洗濯機の節水や節電につながるとする。
一般的に組み込みAIでは、機械学習ライブラリの性能と、必要なメモリ容量はトレードオフの関係にある。機械学習ライブラリの性能を上げようとすると、ライブラリに必要なメモリ容量は大きくなる。反対に、ライブラリに使うメモリ容量を小さくしようとすると、ライブラリの性能は低下してしまう。STマイクロによると、「NanoEdge AI Studioでは、顧客のメモリ空き容量に合わせて、機械学習ライブラリを生成できることが特長だ」という。
また、「Arm Cortex-Mコア」を搭載した同社の32ビットマイコン「STM32」シリーズであれば、NanoEdge AI Studioで作成したライブラリを動かすことができるという。
展示の狙いについて、担当者は「より多くの人にAIの実用性に触れてもらうため」だと説明した。「AIは、バズワードのようにさまざまな場面で使われるようになった。一方で、実社会においてAIをどう活用するのか、一般消費者はまだまだ実感しにくい状況だと感じている。今回のデモでは、身近な生活家電である洗濯機でAIの活用例を示し、AIが日々の節水/節電に貢献できることを感じてもらいたい」(担当者)
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