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EdgeTech+ 2022 特集

2時間弱で学習完了、組み込みAIの最新デモを展示STマイクロがEdgeTech+ 2022に出展

STマイクロエレクトロニクス(以下、ST)は組み込み技術に関する展示会「EdgeTech+ 2022」(2022年11月16〜18日、パシフィコ横浜)に出展し、産業向けの組み込みAI(機械学習)やセンサー関連ソリューションの最新デモを展示した。【訂正あり】

» 2022年12月02日 09時30分 公開
[半田翔希EE Times Japan]

 STマイクロエレクトロニクス(以下、ST)は組み込み技術に関する展示会「EdgeTech+ 2022」(2022年11月16〜18日、パシフィコ横浜)に出展し、産業向けの組み込みAI(人工知能)やセンサー関連ソリューションの最新デモを展示した。

数クリックで簡単にAI機能を追加

 AI機能を組み込みデバイスに簡単に追加可能な開発ツール「NanoEdge AI Studio」を展示した。同製品はPC上のクリック操作を何度か行うだけで、特別な知識や経験を必要とせずに、ML(機械学習)ライブラリを作成できる。ライブラリは「異常検知」「外れ値検知」「分類」「回帰」の4種類で、1種類のみでの活用も複数種類を組み合わせての使用も可能だ。同ライブラリはSTのマイコン「STM32」シリーズに最適化されているので、STM32に容易に実装できる。

左=NanoEdge AI Studioのデモ画面/右=NanoEdge AI Studioのデモ機[クリックで拡大]

 担当者は、「学習用のデータ量は正常動作、異常動作のデータを合わせて数百程度で足りるため、GPUなどを使う既存の学習よりも大幅に少ないデータ量で済む」と述べ、「ライブラリの作成は70分間で約96%が完了するため、1〜2時間あれば推論を開始できる。今までは学習だけで1〜2週間ほどかかる場合もあったため、大幅に時間短縮が可能だ」と説明した。さらに、学習データの実装について「ブラックボックスであるAIの処理過程に関する不安の声が少なくない。そこで、本製品では現在AIがどのような作業を行っているかをツール上で確認できるようにした」と顧客の声に合わせて簡単かつ安心できる設計にしていることを強調した。

「世界初」IoT機器を使った音声合成

 目玉の一つが、LPWA(Low Powe Wide Area)ネットワークの一つであるLoRaを活用した音声合成システムのデモだ。同社のLPWA対応ワイヤレスマイコン「STM32WL」および、マイクロプロセッサ「STM32MP1」を搭載したIoT(モノのインターネット)機器と、東芝デジタルソリューションズの音声合成ミドルウェア「ToSpeak」で構成されている。まず、音声にしたいテキストをPCなどで入力すると、そのテキストデータがLPWAによって、遠方のIoT機器に送信される。その後、ミドルウェアでテキストファイルを音声に変換、再生することができる。

遠隔音声合成システムのデモ[クリックで拡大]

 活用場面について担当者は「IoT(モノのインターネット)を使った音声合成は世界初。今まではテキストのみだったため用途が限られていたが、今後は防災や農業、酪農など広い範囲に一度に伝達が必要な場面での活用が想定できる」と述べた。LoRaでは2バイト毎の転送になるため、デモでは文章を転送/再生するまで数十秒ほど時間を要していた。緊急性を持たない伝達では問題ないが、災害などの緊急性が高い場合は短い言葉でも伝わるように事前に地域や自治体などで放送内容を取り決めておく必要があるだろう。

超低消費電力かつ高性能なモーション判定センサー

 「ISPU(インテリジェント・センサー処理ユニット)」を内蔵した6軸IMU(慣性測定装置)「LSM6DSO16IS/ISM330IS」のデモも展示した。AI処理に最適化されたDSPをセンサーに内蔵することで既存製品よりも超低消費電力かつ高性能なモーション判定を実現した。

LSM6DSO16IS/ISM330ISのデモ[クリックで拡大]

【訂正】6軸IMU(慣性測定装置)の型番の表記に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。(2022年12月12日午前9時16分:編集部)

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