なお、ソニーの新型イメージセンサーについては、その歩留まり向上が大きな課題となっていることが台湾の市場調査会社TrendForceなどによって伝えられている。
今回、早川氏は、「新型イメージセンサーの量産立ち上げにおける費用増については最新の生産状況を反映し、今回、追加の費用見込みを織り込んだが、生産は徐々に安定しつつあり、今後さらに多く費用が増加することはないと見ている」と説明していた。
また、下半期に向け中国メーカーのスマホ新製品における大判化の傾向が、「フラグシップ/ハイエンドに加えミッドレンジでも顕著となってきている」(早川氏)と言及。今後もこの大判化トレンドがイメージセンサー市場全体の成長をけん引し、2030年度まで年平均成長率(CAGR)9%程度で成長するという見方に変更はないと述べ、「2024年度以降に市況が回復した際に成長機会を確実に取り込めるよう、中長期視点での技術開発や生産能力拡張などの取り組みを継続していく」と強調した。
ソニーの社長である十時裕樹氏は、「イメージセンサーの需要自体を見誤っているということではなく、製造経費の問題や競合の中国における過剰在庫によるASP(平均販売価格)の下落などで、収益性に対して主にインパクトを受けているという認識だ」と説明。「I&SS分野は売上高はかなり成長しているが、利益面では若干物足りないという部分がある。これをきちんと利益を伴った成長にしていくというのが次の中期のテーマになってくる。2024年度以降の半導体市況、景況感の回復、とりわけ中国のスマホ市場の回復が待たれるところだが、これらに対してしっかりと今期準備していく」と語った。
なお、第1四半期末の在庫水準について、十時氏は、売り上げ規模拡大に伴う増加のほか、「第1四半期の販売の下振れから、若干重い水準にある」と説明。ロジックおよびセンサーの戦略在庫は年度末に向けて減少を見込むが、「在庫金額全体としては売り上げ規模拡大によって2023年度末には2022年度末と比べ増加するという見通しに変更はない」と述べた。この在庫保有については、「基本的に売り上げの増加に伴った増分であり、過剰な在庫を持つということではない。こうした在庫の保有はある程度継続し、中期的な生産設備の最大効率活用と投資タイミングの最適化を進めていきたい」とした。
ウエハーベースの生産能力は2023年度第1四半期が設営ベースで月産13万2000枚(3カ月の平均値)、ウエハー投入枚数は1カ月当たり12万1000枚(同)だった。2023年度第1四半期は設営ベースが月産13万3000枚(同)、投入枚数は1カ月当たり11万7000枚(同)と見込んでいる。
第1四半期のグループ全体の業績をみると、売上高はI&SS分野のほか、金融分野やゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野、音楽分野で大幅増収となり、前年同期比33%増の2兆9637億円となった。営業利益は同31%減の2530億円、純利益は同17%減の2175億円となっている。この減益は、主に金融分野での減益が要因。金融分野では、新会計基準IFRS第17号適用に伴い、前年度実績を再計算した影響や、前年同期に計上した不動産売却益剥落などによって847億円の減益となった。
通期業績については、I&SS分野のほか、映画領域でもストライキの影響などによって前回予想から売上高を500億円下方修正した。一方で、G&NS分野や音楽分野、エンタテインメント・テクノロジー&サービス分野、金融分野などで上方修正を行い、結果、グループ全体の売上高は前回予想から7000億円増の12兆2000億円に上方修正している。
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