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GaNの米中2大プレイヤー、特許係争に発展EPCがInnoscienceを提訴(2/2 ページ)

» 2023年08月23日 16時30分 公開
[Stefano LovatiEE Times]
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エンハンスメントモードのGaNパワーデバイス

 係争中の特許は全てEPCが米国で申請したもので、具体的には特許第8350294号と8404508号、9748347号、10312335号である。これらの特許は、EPC独自のエンハンスメントモードGaNパワーデバイスの主要な設計および製造技術を保護するものである。EPCによると、これらの特許は、GaNパワーデバイスの実用化(量産化)に貢献する技術をカバーしているという。

 2013年に付与された特許第8350294号は、「補償ゲートMISFET(Metal-Insulator-Semiconductor FET)およびその製造方法」に関するものだ。同特許の対象は、エンハンスメントモード(eモード)GaNパワートランジスタである。より具体的には、バリア層の上とゲートコンタクトの下に半絶縁性GaN層または補償GaN層を備えたeモードGaNパワートランジスタに関するものである。

 従来のGaNパワートランジスタは、デバイス導通中のゲートコンタクトのリーク電流が高いが、この特許が提案するソリューション(MISFET)は、デバイス導通中に電流がリークせず、製造が容易である。これは、ゲートコンタクトの下とバリア層の上に、補償GaN層または半絶縁層が導入されているためである。

 図1は、EPCのGaNパワートランジスタの構造を示したものである。最初に、シリコンウエハー上で薄い窒化アルミニウム(AlN)層を成長させ、基板からデバイス構造を分離する。次に、この上部に高抵抗のGaN層を成長させる。さらに、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)の層をGaNに適用する。隣接する窒化物層内の材料は、異なるバンドギャップを持ち、導電性の2次元電子ガス(2DEG)の発生に役立つ。

EPCのGaNパワートランジスタの構造[クリックで拡大] 出所:EPCのアプリケーションノート

 同じく2013年に付与された特許第8404508号は、「エンハンスメントモードGaN HEMT(高電子移動度トランジスタ)デバイスおよびその製造方法」に関するものである。ほとんどの窒化物デバイスは、ゲートバイアスがゼロの場合、ゲートの下に2DEG領域が存在するため、ノーマリーON型(ディプリーションモード)となる。ただし、2DEGが空乏化(除去)されると、デバイスはエンハンスメントモードになる可能性がある。

判決は2024年10月の予定

 本件に関する聴取は2024年2月に予定されている。判決は同年10月に出される予定だ。法的手続きには、恐らく多大な時間と資金が必要になるだろう。GaN技術の知識が豊富な弁護団と協力すれば勝訴の可能性は格段に高まるので、十分な予算の確保も不可欠である。

 現時点では、この特許係争がGaN市場に与える影響を予想するのは難しい。だが、EPCが勝訴すれば、InnoscienceはeモードGaNデバイスを米国に輸出できなくなることは確かだろう。

【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

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