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8インチGaN-on-Siの量産を実現した中国新興企業TECHNO-FRONTIER 2021

中国のGaNパワーデバイスメーカーであるInnoscience Technology(以下、Innoscience)は「TECHNO-FRONTIER 2021」(2021年6月23〜25日/東京ビッグサイト 青海展示棟)で、同社が販売するディスクリート品やデモボードなどを展示した。

» 2021年06月29日 11時30分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

 中国のGaNパワーデバイスメーカーであるInnoscience Technology(以下、Innoscience)は「TECHNO-FRONTIER 2021」(2021年6月23〜25日/東京ビッグサイト 青海展示棟)で、同社が販売するディスクリート品やデモボードなどを展示した。

 Innoscienceは2015年12月に設立されたIDM(垂直統合型デバイスメーカー)で、8インチのGaN-on-SiウエハーでGaN FETを量産している。現在の従業員数は1000人超。500件以上の特許を取得している。

GaNを作っても作っても足りない

 同社は2019年6月に低耐圧(〜200V)のGaN FETの量産を開始し、同年8月には650V品の量産もスタートした。中国・珠海と蘇州に工場があり、生産能力は珠海工場がウエハー4000枚/月、蘇州工場が6万5000枚/月。蘇州工場は2021年6月末に稼働を開始する。Innoscienceのグローバルマーケティング/セールス&マーケティングでバイスプレジデントを務める樋口泰生氏によると、「中国では、GaNを採用した急速充電器の市場が爆発的に伸びている。65W、45Wクラスでは、GaNを採用すると価格が2〜3割上がるが、それでも小型なので、どんどん売れる。当社の工場でもGaN FETを作っても作っても足りない状況だ」と語る。

 InnoscienceのGaN FETは、ノーマリーオフ型(E-mode動作)。Qrr(逆方向回復電荷)がゼロでリカバリー損失がないという特長を持っている。ASMLと協業し、高精度のフィールドプレートを形成することで、低い動的オン抵抗を実現したとする。

左=Innoscienceの歴史と工場の外観/右=同社のGaN FETの特長。imecやASMLとも協業している(クリックで拡大)

 Innoscienceは、急速充電器以外では、TVなどの民生機器、産業用電源やデータセンター、基地局などをターゲットとする。

左・中央=120Wや65Wの充電器用デモモジュール。「モジュールは、そのまま機器に組み込めるほどきっちり作りこんである」(樋口氏)/右=ディスクリートのGaN FET。imecやASMLとも協業している(クリックで拡大)

 ドライバーICに関しては他社製のSiドライバーICを用いている。「ドライバー内蔵のGaNパワーデバイスは用意していない。内蔵すると自由度が低くなり、ノイズ対策がしにくくなるからだ。ただし、ドライバー内蔵品の開発も進めている」(樋口氏)

左=InnoscienceのGaN FETを搭載した急速充電器も展示されていた/右=8インチのGaN-on-Siエピウエハー。最先端のMOCVD(有機金属気相成長法)を導入しているという(クリックで拡大)

 樋口氏は、GaN搭載の急速充電器の量産が進んでいることで「GaN FETの値段もどんどん下がっている」と語る。「今はSi FETの2倍以下。4〜5年後には、Si FETと同等あるいはそれ以下に下がるのではないか」(同氏)

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