軽くて曲がる、タンデム型太陽電池を開発:変換効率は26.5%
東京都市大学が、軽くて曲げられる「ペロブスカイト/シリコンタンデム太陽電池」を開発した。開発品はセル面積1cm2において26.5%という高いエネルギー変換効率を達成した。
東京都市大学理工学部電気電子通信工学科の石川亮佑教授は2023年9月、軽くて曲げられる「ペロブスカイト/シリコンタンデム太陽電池」を開発したと発表した。開発品はセル面積1cm2において26.5%という高いエネルギー変換効率を達成した。
異なる種類の太陽電池を重ね合わせた「タンデム型太陽電池」が注目されている。高い変換効率が期待できるからだ。既に、ペロブスカイトとシリコン型を組み合わせた太陽電池では、30%以上の変換効率が報告されているという。しかしこれまでは、ボトムセルに厚み200μmのシリコンウエハーを用いていたため、フレキシブル性は得られなかった。
そこで今回、ボトム側に用いるシリコンヘテロ接合太陽電池のシリコンウエハー厚みを83μm程度まで薄くし、その上に厚みが1μm程度のペロブスカイト太陽電池を塗布法で作製する技術を開発した。
具体的に、開発した技術は大きく分けて3つある。その1つは、表面ミラー/裏面テクスチャ構造の薄いシリコン基板を作製するプロセス技術。2つ目は、作製したシリコン基板のミラー表面に、サイズが比較的小さい凹凸を形成し、高性能なボトムセルを作製する技術。これは光を閉じ込めるための技術である。3つ目は、作製したボトムセル上に塗布という工程を用い、ペロブスカイト層を堆積する技術である。
左上はフレキシブルなペロブスカイト/シリコンタンデム太陽電池の外観、左下はタンデム太陽電池の外観、右はタンデム太陽電池の概念[クリックで拡大] 出所:東京都市大学
各種太陽電池の変換効率(セル面積1cm2以上)と曲げ性を比較[クリックで拡大] 出所:東京都市大学
研究グループは今後、界面パッシベーションの改善や両面受光構造を導入していく。これにより、効率を更に向上させることが可能だという。最終的には35%以上の変換効率を目指す考えだ。
- 東京都市大、青色LED利用の光無線給電技術を開発
東京都市大学は東京工業大学と共同で、青色LEDを用いた光無線給電技術を開発した。移動体追尾装置と組み合わせることで、移動中にスマートフォンや電気自動車(EV)への光無線給電が可能になる。
- 北海道大、全太陽光を利用できるナノ材料を開発
北海道大学は、水と光を用いてナノ結晶を合成する手法「水中結晶光合成(SPsC)」により、光学的臨界相を有するナノ材料の開発に成功した。開発した材料は、赤外領域を含む全太陽光波長域を利用できるため、これまでにない光熱変換特性などが得られるという。
- ペロブスカイト薄膜の相乗的表面修飾法を開発
京都大学や理化学研究所、英国Oxford大学の共同研究グループは、スズを含むペロブスカイト太陽電池で、最大22.7%の光電変換効率と高い耐久性を実現する技術を開発した。その技術とは、スズ−鉛混合系ペロブスカイト薄膜を効果的に表面修飾する手法である。
- 東北大、硫化スズを用いて高効率太陽電池を開発へ
東北大学多元物質科学研究所の鈴木一誓助教らによる研究グループは2022年12月、硫化スズ(SnS)を用いて、高効率の太陽電池が開発できることを実証した。今回の成果はSnS太陽電池から0.7〜0.8Vの開放電圧が得られる可能性を示すものだという。
- ワイドギャップCIS系材料の界面改質手法を開発
産業技術総合研究所(産総研)と甲南大学は、ワイドギャップCIS系材料を用いた太陽電池や光電気化学セルの性能を向上させることができる「界面改質手法」を開発した。
- 東北大学、可視光透過率約80%の太陽電池を開発
東北大学は、可視光透過率が約80%という、ほぼ透明な太陽電池を開発した。試作した1平方cmの太陽電池は、高い透明性を維持したまま、最大420pWの発電ができることを確認した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.