ドローンの航法精度を向上、ミリ波RFIDタグ開発:視界不良でも自律飛行を可能に
NTTは、ドローンの航法精度を向上させる「ミリ波RFIDタグ」を、東京大学と共同で開発した。周囲環境の情報を伝える標識として機能する。このタグを活用することで暗闇や悪天候など視界不良の状況下でも、ドローンの自律飛行が可能となる。
NTTは2023年10月、ドローンの航法精度を向上させる「ミリ波RFIDタグ」を、東京大学と共同で開発したと発表した。周囲環境の情報を伝える標識として機能する。このタグを活用することで暗闇や悪天候など視界不良の状況下でも、ドローンの自律飛行が可能となる。
ドローンは、環境計測や物流などさまざまな業務に活用されるようになった。ところが無人飛行を行う場合、現状ではカメラによる画像認識技術に依存しており、夜間や霧、雨天時などは飛行性能が低下するという課題があった。
そこで研究グループは、ドローンに搭載された小型ミリ波レーダーを用い、空中から位置情報などを読み取ることができるバッテリーレスのミリ波RF IDタグを開発した。特に今回は、天候の影響を受けにくいミリ波を用い、タグの情報を読み取るために「タグの構造設計」と「信号処理手法」を新たに確立した。
今回開発した技術の概要[クリックで拡大] 出所:NTT、東京大学
新たに開発した「コーナリフレクタ型チップレスRFID」は、「コーナリフレクタ構造の形状変化」や「ビットパターンと読み取り可能距離の設計手法」を採用し、空中の広範囲から情報を読み取れるようにした。実験では、10m以上の距離から仰角30度以上および、方位角20度以上の範囲で読み取れた。この時の読み取り成功率は90%以上となった。従来に比べ、3次元の読み取り可能な角度は7.8倍以上になるという。
上図は開発したRF IDタグの概要。下図は実験で検証した読み取り可能な範囲[クリックで拡大] 出所:NTT、東京大学
もう一つは新たな信号処理法の開発である。固有値解析を用いた空間解像度を固定しない「空間−反射強度推定手法」を導入し、読み取り成功率を向上させた。その上で、得られた空間−反射強度情報を含む点群をクラスタリングし、ノイズの多い環境下でもタグの位置を自動検出できる信号処理手法を開発した。
実験により、壁や自動車、階段といった障害物が周囲にある環境でも、高い精度でタグを検知し、情報を読み取れることを確認した。
周囲に障害物が多い環境下におけるタグ検出手法の検証結果[クリックで拡大] 出所:NTT、東京大学
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