モビリティ領域では自動運転の実現に向けた研究開発が進んでいる。TDKは「自動運転が実現すると、くつろぎを提供することがモビリティの新たな役割になる」(ブース担当者)としている。ブースでは架空のモビリティ「Personal Relaxation Mobility(PERMO)」という形で車内設備の利便性向上に資する技術を展示した。
PERMOの外装には調光フィルムを使用した。プラスチックフィルムにAg(銀)合金薄膜を均一形成したAgスタックフィルム(Ag積層型透明導電性フィルム)で液晶フィルムを挟み込んだもので、通電によって透明な状態と中が見えない状態を切り替えられる。車の停止中は中が見えない状態にしてプライベート空間を楽しめるというイメージだ。
車内を見てみると、天井と椅子の後ろに薄型の圧電スピーカー「PiezoListen」が取り付けられている。一般的なダイナミックスピーカーはパーツの数が多いため大きく、厚くなるが、PiezoListenは厚さ約0.49mmと「世界最薄クラス」(TDK)の薄板状で、天井などにも圧迫感なく取り付けられるという。
他に、車内にはスマホを置くだけで充電できる薄型パターンコイルが搭載され、リアガラスには調光フィルムと同じAgスタックフィルムを用いたくもり止めヒーターが搭載されていた。
TDKが開発中のフルカラーレーザーモジュールを搭載したAR/VRグラスも展示された。TDKのフルカラーレーザーモジュールは、RGB各色のレーザー素子から出た光を1つに合わせて照射する平面光波回路方式を用いている。従来のレーザーモジュールと比べて部品数が削減できることで、約10分の1まで小型化できるという。
また、展示されたAR/VRグラスは、視力によらずフォーカスフリーで映像を楽しめる構造になっている。一般的なAR/VRグラスはグラス上に映像を投影してスクリーンにしていて、着用者はそのスクリーンにフォーカスを合わせることで映像を視聴する。視力が悪い人はメガネなどを着用しなければならないほか、目のピント調節を続けることが画面酔いの原因にもなっている。
一方、今回展示されたAR/VRグラスはレーザー光を網膜に直接照射する直接網膜投影方式を採用していて、目のピント調節の必要がない。そのため視力によらずに映像を視聴でき、画面酔いも解消されるという。直接網膜投影方式は技術としては存在していたものの、AR/VRグラスに適用するにはレーザーモジュールの大きさがネックになっていた。TDKの小型フルカラーレーザーモジュールによってAR/VRグラスへの適用が可能になったという。
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