TDKが、同社として初となるワイヤーボンド対応のNTCサーミスターを開発した。光トランシーバーおよびLiDAR用LDの温度検知向けで、抵抗値交差±1%の高精度と高温多湿環境での高信頼性を実現している。
TDKは2023年9月7日、同社として初となるAu(金)ワイヤーボンド対応のNTCサーミスター「NTCWSシリーズ」を発表した。はんだ付けが不要になり、実装時の配置場所の自由度が向上。同時に、抵抗値交差±1%の高精度と高温/多湿環境での高信頼性も実現した。光トランシーバーやLiDARに用いるレーザーダイオード(LD)の温度検知に向け、LDパッケージ内に実装することを想定している。
5G(第5世代移動通信)基地局などで用いられる光通信用トランシーバーや、車間距離測定に使用されるLiDARなどで、LDを用いるデバイスが増加している。LDは熱によって波長が乱れることから、その高性能化のため、高精度な温度センシングによって温度を制御することが求められる。TDKは今回、こうした要望に向けてNTCWSシリーズを開発したとしている。
NTCWSシリーズは、TDKとして初となるワイヤーボンディング対応のNTCサーミスターだ。半導体セラミックの上下面に金電極を形成したタイプの製品で、上面はワイヤーボンディングプロセス、下面は導電性ペーストや焼結プロセスで接合できる。ワイヤーボンディングははんだ付けに比べ低温で行えるため、周囲の部品への熱の影響を考えて距離を大きく取る必要がなくなり、省スペース化できるという。また、測温対象に近づけて設置することで、より高感度で検知できるという利点もある。
NTCWSシリーズは、抵抗値公差±1%品および±3%品をそろえている。25℃環境における温度精度は、抵抗公差±1%品が±0.3℃、±3%品が±0.7℃だ。抵抗値公差±1%は「業界最高水準」(TDK)の高精度で、同社は車載バッテリーの発火防止装置など、より厳密な温度測定が必要な用途には±1%品を推奨している。
TDKは、「一般的に温度センサーは高温と水分に弱いが、NTCWSシリーズについては高温/多湿環境でも十分な信頼性を確認している。TDKが培ってきた焼成のノウハウが信頼性に反映されている」と説明。−40〜+125℃と広い使用温度範囲を実現している。
TDKが実施した信頼性試験では、同製品を+125℃の環境で2000時間放置した場合の抵抗値のズレは0.23%、温度が+85℃/湿度が85%の環境で2000時間放置した場合は0.07%に収まったという(下図)
TDKは「産業機器/車載用途をはじめとする温度センサーの製品強化を進めている。今後もNTCサーミスターのラインアップを拡充し、市場ニーズに対応していく」としている。NTCWSシリーズは2023年9月から量産を開始していて、当初は月産100万個を予定する。サンプル価格は100円/個(税抜)だ。
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