今回は「2.6.5.2 量子コンピュータ」と「2.6.5.3 量子計測・センシング」の概要を紹介する。
ご注意
今回は前編の続きです。まず前編を読まれることを強く推奨します。
前編(前回)では、第2章第6節第5項「2.6.5 量子技術」の最初の項目「2.6.5.1 はじめに」の概要を説明した。今回は「2.6.5.2 量子コンピュータ」と「2.6.5.3 量子計測・センシング」の概要をご紹介する。
注目度から見ると、量子技術に期待される最大の応用は「量子コンピュータ(Quantum Computer)」だろう。従来のコンピュータを超える存在になると期待されており、世間や大マスコミなどの注目度は低くない。
従来のコンピュータと量子コンピュータは何が違うのだろうか。従来のコンピュータは、情報を2値のビット(論理値の「高(1)」あるいは「低(0)」)に換算して扱う。「2進法」表現とも呼ぶ。例えば4値を扱うときは、2個のビット(bit)で表現する。なお量子コンピュータと対比させるときは、従来のコンピュータを「古典コンピュータ(Classical Computer)」と呼ぶことが多い。
量子コンピュータは、「量子ビット(qubit)」を扱う。量子ビットは「観測あるいは測定するまで論理値が「高(1)」あるいは「低(0)」であるかが定まらない」「2つの論理値が重なった状態(重ね合わせ状態)にある」という性質を有する。
この量子ビットを計算に利用すると、特定の計算処理では古典コンピュータをはるかに上回る性能を実現できると考えられている。ただし量子ビットの作成と維持には技術的な困難が伴う。特に問題なのは、量子ビットの状態(「コヒーレンス」と呼ぶ)が非常に脆弱であり、外部電磁界や熱などの侵入によって簡単に壊れてしまう(「デコヒーレンス」と呼ぶ)ことだ。
量子ビットを生成する技術には、超電導量子ビット、イオントラップ、半導体量子ドット、光子、トポロジカル量子ビット(マヨナラ粒子)などがある。その多くは熱雑音の影響を排除するため、絶対零度に近い極低温環境で論理回路を動作させている。
このほか、誤りに強い量子コンピュータは少なくとも1万個の量子ビットを要する、誤り訂正技術の実装が不可欠である、電磁界シールドが必要、などの課題を抱える。
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