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新型イメージセンサー歩留まり問題が収益圧迫、ソニーの半導体事業影響は2024年度にも(1/2 ページ)

ソニーグループのイメージング&センシングソリューション分野の2023年度第2四半期売上高は、前年同期比2%増の4063億円となった。一方、営業利益は同37%減と大幅減の464億円になった。調整後OIBDAも同12%減の1071億円と減益になった。イメージセンサー新製品の歩留まり改善に向けた費用増などが影響した。

» 2023年11月09日 22時00分 公開
[永山準EE Times Japan]

 ソニーグループ(以下、ソニー)は2023年11月9日、2024年3月期(2023年度)第2四半期(7〜9月)決算を発表した。イメージング&センシングソリューション(I&SS)分野の売上高は為替の好影響で前年同期比2%増の4063億円となった。一方、営業利益は同37%減と大幅減の464億円になった。調整後OIBDA※)も同12%減の1071億円と減益になった。イメージセンサー新製品の歩留まり改善に向けた費用増などが影響した。同社によると、歩留まり問題は、I&SS分野の2023年度通期営業利益の見通しを、15%前後押し下げているという。

※調整後OIBDA(Operating Income Before Depreciation and Amortization):営業利益と減価償却費および償却費(コンテンツ資産に含まれる繰延映画製作費、テレビ放映権、自社制作のゲームコンテンツおよび原盤制作費、繰延保険契約費の償却費を除く)からソニーグループが非経常的と判断する損益を除いた指標。

 ソニーは今回、2023年度通期見通しを前回発表(2023年8月)から見直した。車載向けおよび産業/社会インフラ向けイメージセンサーの減収はあるものの、為替のプラス影響によって同分野の売上高は前回予想比300億円増の1兆5900億円に、営業利益も同150億円増の1950億円、調整後OIBDAも同150億円増の4400億円にそれぞれ上方修正した。

2023年度第2四半期、為替影響で増収も大幅減益に

 I&SS分野の売上高は、産業/社会インフラ向けイメージセンサーが中国の景気回復の遅れなどから減収となったものの、為替のプラス影響が240億円分あり、結果、前年同期比80億円増の増収となった。一方で、営業利益は、為替の好影響が183億円分あったものの、同276億円減の大幅減益となった。減価償却費の増加のほか、モバイル機器向けイメージセンサーの新製品量産立ち上げにおける費用増、製造経費の増加および産業/社会インフラ向けイメージセンサーの減収が影響した。減価償却費の増加を含まない調整後OIBDAでも、同150億円減となっている。

I&SS分野の2023年度第2四半期業績および通期予想[クリックで拡大] 出所:ソニーグループ I&SS分野の2023年度第2四半期業績および通期予想[クリックで拡大] 出所:ソニーグループ

 イメージセンサーの主要市場であるスマートフォン製品市場について、ソニー執行役員財務/IR担当の早川禎彦氏は、「中国や新興国での需要減退に底打ち感が出てきているものの、北米市場では大幅な前年割れの状況が継続している」と説明。市場の回復が2024年度以降になるというこれまでの見方に、変更はないとした。スマホメーカー各社のハイエンドを中心とした新製品への大判センサー搭載および、モバイルセンサー市場の金額規模の拡大については「想定通りに進んでいる」という。

歩留まり問題、I&SS分野の通期営業利益の見通し「15%前後」押し下げる

 ソニーは2023年5月に発表した新型スマホ「Xperia 1 V」において新型イメージセンサーである2層トランジスタ画素積層型CMOSイメージセンサー(CIS)を世界初搭載。同年9月にAppleが発売した「iPhone 15」にも2層トランジスタ画素積層型CISが搭載されたことが判明しているが、その歩留まり向上が大きな課題となっていたことが、台湾の市場調査会社TrendForceなどによって伝えられていた。

 早川氏は、モバイル向け新型イメージセンサーの歩留まりについて「これまでの初期的な対応策によって一定の改善を達成し、出荷数量も増加しているが、収益への影響は前回想定から変わらず、2023年度の当分野営業利益の見通しを15%前後、押し下げている」と説明した。

ソニーグループ社長の十時裕樹氏 出所:ソニーグループ ソニーグループ社長の十時裕樹氏 出所:ソニーグループ

 同社は新製品の歩留まり改善のため、開発、設計から製造までのプロセスや体制の再点検を進めているものの、影響は2024年度にも残る見込みだという。早川氏は、「2024年度にはセンサー当たりの歩留まりコストに関する当初計画からの悪化は、2023年度の3分の1程度と大幅に減少する見込み」としつつ、「当該商品群は主力モデルとして大幅に生産数量が増加する見込みであることから、2024年度の損益への影響は、2023年度の影響額の7割程度になると見ている」と語っていた。

 同社社長の十時裕樹氏は、この歩留まり問題について、技術的な詳細は「競争力の源泉」だとして触れなかったが、「一般的に、新製品は歩留まりが安定するまでには一定の時間がかかる。改善を積み重ねてターゲットとするレベルまでもっていくのだが、これが、当初のもくろみより相当時間がかかってしまった。いくつかの新しい技術に挑戦しているということだが、複数の問題があり、どうしても手間取ってしまった。また、われわれの半導体は比較的TAT(turn-around-time)が長いため、ウエハーを投入してから出来上がるまで、その改善の状況について、なかなか全貌がつかみにくいということが問題の根っこにある」などと述べていた。

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