サプライチェーンの混乱をへて、機器メーカーはウエハーの調達戦略を再考する必要がある。特に慎重に検討すべきは、レガシープロセスを使用する半導体だ。
2019年後半から2023年初めにかけて、AI(人工知能)やEV(電気自動車)、5G(第5世代移動通信)、IoT(モノのインターネット)市場の成長によって、半導体サプライチェーンのほとんどのプロセスノードで需要と供給の変動が生じた。
2023年上半期、半導体市場は、半導体生産能力を以前より利用できるようになったことと、関連する最終市場の成長鈍化に反応して、着実に変化した。
今後数年間は、半導体不足は過去のものになったと思いたいが、こうした変化は今後も続くと予想される。機器メーカーは、コスト増を招くことになる遅延を回避するために、自社で使用する、特定のプロセスノードで処理されたウエハーの入手に細心の注意を払う必要がある。
プロセスノードには、大きく分けて11nm未満、11〜19nm、20〜64nm、65nm以上の4つがあり、それぞれに独自の目的と用途がある。近年のチップ不足を受けて、市場全体の在庫バランスが調整されている。半導体メーカーは生産戦略を転換し、どのノードに注力すべきかを再検討している。
新しい製造工場、つまり「ファブ」は、より微細なノードの製品を生産するために展開されている。その結果、より大きな(レガシーの)ノードの製品を生産するファブへの投資は限られる。
こうした優先順位の見直しは、さまざまな業界に影響を与える。ノードサイズが小さいほど、利益率が高く、高度な技術製品に必要なパワーとコンピューティングを提供できる。だが、より大きなノードサイズを頼りにしている企業はどうなるのだろうか? また新たな不足が起きるのだろうか?
機器メーカーはこうした微妙な状況を把握し、強力な調達戦略を立てて、ウエハーの供給の変動に関するサプライチェーンの混乱に備える必要がある。
現在の在庫調整期間が過ぎれば、今後数年間は全てのプロセスノードでウエハーの供給が需要を上回る見通しだ。ただし、65nm以上のプロセスを使用するレガシーコンポーネントは、需要と供給のバランスが大きく崩れると予想される。
レガシーコンポーネントを必要とする最終製品には、以下のようなものがある。
時の経過とともに、レガシーコンポーネントはメーカーや従来の流通ネットワークから調達するのが難しくなっている。産業機器や防衛/航空宇宙、普及価格帯の自動車などの高い信頼性が必要となる業界では、レガシーコンポーネントが極めて重要である。これらの業界ではレガシーコンポーネントが今後も長年にわたって使われ続ける見通しで、供給が減少しても需要が増加すると予想される。
新規ファブへの投資は、11nm未満のコンポーネントを必要とするAIやハイパースケーラー/クラウドアプリケーション、高度なEVなどの成長市場に焦点を当てている。
これらの微細なノードは、小型パッケージで高い計算能力を必要とする次世代製品の鍵となる。より大きなノードサイズではできないことを実現し、性能や電力効率、トランジスタ密度の向上を実現する。こうした先端ノードで製造したICを必要とする最終製品には、以下のようなものがある。
最先端機能とエンドユーザーの需要は、通常、半導体メーカーにとって最高の利益につながる可能性があるため、半導体メーカーはより微細なノードの製品の生産拡大にリソースを集中させている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.