新しいファブを立ち上げて稼働させるには、かなりの時間と費用が必要だ。数年間は微細ノードの需要に十分に対応することができないと思われる。その間、機器メーカーは半導体不足に対する心構えをしておく必要があるが、2019年から2022年にかけて市場が経験したほどには重大な事態にならないと予想される。
半導体業界には常に、好況と不況のサイクルがある。EVやAI向けのCPU/GPUといった先進製品の人気の高まりによって、特定のプロセスノードの市場が制約を受ける可能性がある。米国の「CHIPS and Science Act」やEUの「European Chips Act」は、半導体の生産能力の増強を約束しているが、ファブが完全に稼働するには数年かかる可能性があるため、需要を満たすには間に合わない。
需要の上振れによる半導体不足を回避するために、機器メーカーはサプライチェーンの混乱による供給の増減から身を守る計画を立てる必要がある。機器メーカーは、データに基づいた以下の4つの戦略を含む強固な長期計画を採用することで、よりレジリエントな地位を確立することができるだろう。
(1)サプライヤーのネットワーク構築:機器メーカーは、現在の相互につながったサプライチェーンを最大限に活用し、信頼できるサプライヤーのネットワークを構築すべきである。グローバルサプライヤーとローカルサプライヤーの両方に広く網を張ることで、不足が生じた場合の選択肢ができる。また、予期せぬ事態によって主要部品の生産に影響が出た場合に備えて、代替サプライヤーとの関係を築いておくことで、生産の中断を防ぐことができる。
(2)反応時間の短縮:敏捷(びんしょう)性と迅速な行動は、今日のサプライチェーンをうまく乗り切るための鍵となる。サプライチェーンの混乱が発生したら、すぐに対応すべきだ。静観していると、長期的な問題に発展しかねない。
(3)戦略的な在庫購入計画:事前に計画を立て、潜在的な不足に先んじて在庫を追加購入している機器メーカーは、サプライチェーンの混乱に耐えられる(または回避できる)可能性が高い。安全在庫の確立には費用がかかる能性があるが、リスクの高い主要部品がある場合は、長期的に見れば、かけたコストに見合う価値があるだろう。
(4)需要予測:高度な分析と最新の市場予測情報により、機器メーカーは、需給変動の一歩先を行くことができる。レジリエントな市場戦略には、パートナー、サプライヤー、顧客、競合他社を含む全体的な視点が不可欠になる。
市場は進化し続けるものだ。在庫のバランスが調整され、技術ニーズが変化し、ファブが方向転換するにつれて、特定のプロセスを使ったウエハーの入手可能性は変化する。今後数年間、機器メーカーは必要なコンポーネントへのアクセスを確保し、不確実性の中で生き残るために、健全な調達戦略を策定しなければならない。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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