転写可能なCNT透明導電ナノシート、マルアイが開発:あらゆる素材や曲面に貼れる
紙製品・化成品メーカーのマルアイは、転写可能な「カーボンナノチューブ(CNT)透明導電ナノシート」を開発した。ガラスやゴム、木材などさまざまな素材や曲面に貼り付ければ、容易に導電性を持たせることができる。
紙製品・化成品メーカーのマルアイは2023年11月、転写可能な「カーボンナノチューブ(CNT)透明導電ナノシート」を開発したと発表した。ガラスやゴム、木材などさまざまな素材や曲面に貼り付ければ、容易に導電性を持たせることができる。
CNT透明導電ナノシートは、東京工業大学との産学連携により開発した。「基材」と厚みが1μm以下という「CNT導電フィルム(CNT膜)」との間に、水溶性膜を挟んだ構造である。このシートを水に浸すとCNT導電フィルムを基材から剥がすことができる。
剥がれたCNT導電フィルムを、貼り付けたい素材に転写すれば、対象物に導電性を持たせることができる。CNT導電フィルムの膜厚を変えれば、表面抵抗率を102〜108Ω/sqの間で調整することが可能である。
左はガラス瓶、右はCNT透明導電ナノシートを転写したポリエチレン容器[クリックで拡大] 出所:マルアイ
CNT透明導電ナノシートの転写例[クリックで拡大] 出所:マルアイ
マルアイは、独自開発の導電・帯電防止インキを用い、オリジナルの導電フィルムを製造、販売している。2018年1月にはシングルウォールCNTを用いた高透明導電シート「SCS・TC(Super Clean Sheet・Transparent Clear)」を開発した。可視光透過率は 84.46%で、A-PET(非晶性ポリエチレンテレフタレート)並みの高い透明性を実現し、経時劣化も小さい。このため、主に電化製品や自動車分野で、導電トレイとして用いられているという。
表面抵抗率と帯電の関係性を示すイメージ図[クリックで拡大] 出所:マルアイ
開発したCNT透明導電ナノシートは、「SCS・TC」の特性をベースに汎用性を高め、さまざまな対象物や曲面にも導電性を付与できるよう、転写機能を追加した製品となる。
- 極細で長い銀ナノワイヤが決め手、透明導電フィルム
大日本印刷とマイクロ波化学は2023年10月3日、高い透明性と導電性を両立した透明導電フィルムを開発したと発表した。同フィルムは、マイクロ波化学が開発した直径11nmの銀ナノワイヤを材料に、大日本印刷が独自の塗工技術を使って薄膜形成したものだ。
- ミリ波アンテナやヒーターになる透明導電フィルム
パナソニック インダストリーは「TECHNO-FRONTIER 2023」で透明導電フィルム「FineX(ファインクロス)」を展示した。独自の工法により高い透過率と低抵抗を両立させたといい、アンテナやヒーターなどへの用途の拡大を見込む。
- 産総研、高電子移動度の透明導電フィルムを開発
産業技術総合研究所(産総研)は、従来のITO膜に比べ電子移動度が6倍以上で、近赤外帯域の透過率を1.7倍に高めた「フレキシブル透明導電フィルム」を開発した。赤外線監視カメラや車載カメラの性能を向上させることが可能となる。
- 低抵抗で高い透過率の透明導電フィルムを商品化
パナソニック インダストリー社は、独自のロールツーロール工法を用い、低抵抗で透過率の高いメタルメッシュタイプの「透明導電フィルム」を商品化した。車載や民生用途のタッチセンサー、透明アンテナ、透明ディスプレイ用基板、透明ヒーターなどの用途に向ける。
- さまざまな組成のTMD単層ナノチューブを合成
東京都立大学らの研究チームは、窒化ホウ素(BN)ナノチューブの外壁や内壁をテンプレート(基板)に用い、さまざまな組成の「TMD(遷移金属ダイカルコゲナイド)単層ナノチューブ」を合成することに成功し、その構造的な特徴も解明した。効率が高い太陽電池などに向けた材料設計の指針になるとみられる。
- 印刷技術で光・電磁波撮像センサーシートを生産
中央大学の研究グループは、新たに開発したスクリーン印刷法を用い、「光・電磁波撮像センサーシート」を生産することに成功した。同センサーは非破壊検査カメラシートなどの用途を視野に入れる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.