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極細で長い銀ナノワイヤが決め手、透明導電フィルム光透過率90%超

大日本印刷とマイクロ波化学は2023年10月3日、高い透明性と導電性を両立した透明導電フィルムを開発したと発表した。同フィルムは、マイクロ波化学が開発した直径11nmの銀ナノワイヤを材料に、大日本印刷が独自の塗工技術を使って薄膜形成したものだ。

» 2023年10月13日 09時30分 公開
[半田翔希EE Times Japan]

 大日本印刷(以下、DNP)とマイクロ波化学は2023年10月3日、高い透明性と導電性を両立した透明導電フィルムを開発したと発表した。

 同フィルムは、マイクロ波化学が開発した直径11nmの銀の導電性繊維(銀ナノワイヤ)を材料に、DNPが独自のインキ配合と精密塗工技術を用いて薄膜形成したものだ。用途は、車載用LiDAR向け透明ヒーターなどを想定していて、2023年12月のサンプル提供開始、2024年12月の量産開始を予定している。

開発した銀ナノワイヤ分散液とSEM画像開発した透明導電フィルム 左=開発した銀ナノワイヤ分散液とSEM画像/右=銀ナノワイヤを用いた透明導電フィルム[クリックで拡大] 出所:DNP、マイクロ波化学

 近年、LiDARなどのセンサーを搭載した自動車が増えている。寒冷地では雪や霜が付着してセンシング精度が低下することから、雪/霜を溶かすために透明ヒーターが活用されている。ただ、透明ヒーターは、LiDARから発射される光を減衰させてしまうため、高い透明性が求められている。

 透明導電フィルム(透明ヒーター)の材料としては、高い透明性や導電性を持つ銀ナノワイヤが注目されている。銀ナノワイヤは、細く長くすることで透明性や導電性などの性能が向上することが分かっているが、従来方法では銀ナノワイヤを長くする過程で太くなってしまうため、細さと長さの両立が難しかった。

透明導電フィルムの開発背景 透明導電フィルムの開発背景[クリックで拡大] 出所:DNP、マイクロ波化学

 今回、マイクロ波化学は、銀に直接マイクロ波を照射する結晶制御技術を改良し、結晶を長さ方向に成長させることで、細くて長い銀ナノワイヤを生産する技術を確立した。これにより、銀ナノワイヤの直径を既存の17nmから11nmに縮小。DNPは独自のインキ配合とウェット方式による精密塗工技術の組み合わせによって、この銀ナノワイヤを低温で、かつ均一に薄膜形成した透明導電フィルムの開発に成功したという。今回開発した透明導電フィルムの光透過率は、同社従来品の86.6%から90.5%に向上したという。

 DNPの担当者は「当社は以前、銀ナノワイヤを別用途向けとして研究していた。しかし、当時想定していた用途で優れた特性を持つ別材料が見つかったため、研究を中断していた。今回、車載用LiDAR向け透明ヒーター用途として銀ナノワイヤの活路を見いだしたため研究を再開した」と説明した。

 マイクロ波化学の担当者は「今回発表した透明導電フィルムは、マイクロ波化学が開発した直径11nmの銀ナノワイヤを使い、DNPの成膜技術で薄膜形成したものだ。現状、発表した銀ナノワイヤは、透明導電フィルム用途ではDNPのみに提供する予定だ」とコメントした。

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