SynopsysがAnsysを買収するというニュースが業界をにぎわせている。買収が実現すれば、2024年のエレクトロニクス設計業界における重要な出来事となるだろう。また、EDA業界やIC設計全般にも大きな影響を与える可能性がある。
EDA業界のビッグスリーであるCadence、Siemens EDA、Synopsysは、その地位の大部分を小さな買収の積み重ねによって築いてきた。しかし、SynopsysがAnsysを買収する、というニュースは、それとは異なるようだ。Synopsysの時価総額は約850億米ドルだが、Ansysの時価総額も260億米ドル規模である。
Bloombergは2023年12月21日(米国時間)、SynopsysがAnsysを1株当たり400米ドル以上で買収する可能性があると報じた。ただ、Wall Street Journalがその翌日報じたところによると、他にも買収を狙う企業がいる可能性があるという。それは、EDA業界の“重鎮”であるCadence Design Systemsかもしれないし、かつてMentor Graphicsを買収したSiemensかもしれない。
米国ペンシルベニア州キャノンズバーグに本社を置くAnsysは、製品設計やテスト用のシミュレーションソフトウェアソリューションを提供している。1970年、創業者であるJohn Swanson氏によってSwanson Analysis Systems Inc.(SASI)として設立され、1994年にベンチャーキャピタルのT.A. Associatesに買収された同社はその後、社名をAnsysに変更。1996年にナスダックに上場した。
Ansysは長年にわたり、マルチフィジックスエンジニアリングシミュレーション技術のサプライヤーとしてその地位を確立し、エンジニアが、統合されたエンジニアリング環境で構造や伝熱、流体、半導体素子、光学素子などの相互作用をシミュレーションで解析できるようにした。
Synopsysの共同創業者であるAart de Geus氏がCEO(最高経営責任者)の座を後継者であるSassine Ghazi氏に譲り、会長職に移ろうとしているこのタイミング(2024年1月1日付の予定)で、今回の買収の可能性に関するニュースが飛び込んできたことも、特筆に値する。
近年、SynopsysとAnsysは戦略的パートナシップを締結し、両社の関係を強化している。両社は最近、SoC(System on Chip)および、2.5D/3D IC向けのサインオフソリューションを提供するために提携した。この戦略的提携の一環として、Ansysは同社のデジタルパワーインテグリティサインオフソリューション「RedHawk-SC」をSynopsysの「Fusion Compiler」プラットフォーム、「3DIC Compiler」プラットフォーム、「PrimeTime」サインオフプラットフォームに統合した。
SynopsysによるAnsys買収計画はまだ進行中で、今後詳細が明らかになる見込みだ。しかし、この買収が実現すれば、2024年のエレクトロニクス設計業界における重要な出来事となるだろう。また、EDA業界やIC設計全般にも大きな影響を与える可能性がある。
【翻訳、編集:EE Times Japan】
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