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Mentorがついに2021年1月から「Siemens EDA」に2016年の買収から4年

SiemensはIC-EDA(Mentor事業部門)担当エグゼクティブバイスプレジデントであるJoe Sawicki氏のブログを通じ、同事業部門がついに「Siemens EDA」となることを発表した。Siemens EDAは今後も引き続き、Siemens Digital Industries Softwareの一部門として運営される予定だ。

» 2020年12月17日 10時30分 公開
[Nitin DahadEE Times]

 合併買収(M&A)の世界で最も大きな課題の一つに、統合された(1社あるいは複数の)企業を、世の中にどう紹介するかがある。Siemensが2016年に45億米ドルでMentor Graphicsを買収した際、Mentor Graphics関連の記事を執筆する時に「Mentor, a Siemens business(対訳:Siemensの一事業であるMentor)」という言葉を用いるのは少々ぎこちないと感じた記者は、筆者だけではなかったはずだ。

SiemensのJoe Sawicki氏

 ここにきて、SiemensはIC-EDA(Mentor事業部門)担当エグゼクティブバイスプレジデントであるJoe Sawicki氏のブログを通じ、同事業部門がついに「Siemens EDA」となることを発表した。Siemens EDAは今後も引き続き、Siemens Digital Industries Softwareの一部門として運営される予定だ。

 Sawicki氏は、チップ設計のみならず、製造プロセス、さらにその先のさまざまな領域でのEDAの重要性について語りつつ、次のように述べた。

 「IC設計者は35年以上にわたり、チップを製造すべくデジタルツインを作り出してきた。Siemens EDAが提供するデジタルツインは、さらに一歩進んでいる。単に、シミュレート可能な設計のデジタルツインがあるだけでなく、その設計から実際に製造するためのプロセスのデジタルツインもある。それらは全て、継続的な改善に向けたダウンストリームからのフィードバックを実現したり、洞察をもたらしたりするような形で融合されている。製品が実際に現場で使われていれば、課題も生じ得る。そうした課題なども含めたデータは、設計を改善するために、デジタルツイン上の設計にフィードバックできる。現場で使われている製品をソフトウェアでアップデートするために使うことも可能だ」

 Siemens PLMでエグゼクティブチェアマンを務めていた故Chuck Grindstaff氏は、2017年に開催された「Design Automation Conference(DAC)」の基調講演で、IoT(モノのインターネット)機器の数に関する予測が多岐にわたる一方で、「大量のデバイスがインターネットに接続されていて、今後もその数は増えていく」という事実は、議論の争点にはなっていないと語った。だからこそ、SiemensはMentorがIC領域で築いてきた設計技術を利用し、それをさらにシステムレベルへ持ち込むことに好機を見いだしたとGrindstaff氏は述べていた。

 その1年後、SiemensのCEO兼プレジデントであるJoe Kaeser氏が、現在では一般的に「デジタルツイン」と呼ばれている概念を背景に、Mentor買収の理由を繰り返し説明した。同氏は2018年の投資家向けカンファレンスで、「長年、Siemensをウォッチしてきた方は疑問に感じていると思う。この“デジタル工場”のようなことをするのは本当に意味があるのか。そんな時代が本当に来るのか。あるいは、UG(Unigraphics:ハイエンドCAD/CAM/CAEシステム)を手掛ける企業を買収して、資金の無駄遣いではないかと。私は、これで正解だったと考えている。実際、われわれが当初考えていたよりも、ずっと良い結果となった」と語っている。

 Sawicki氏は、「あらゆる産業が、デジタル化によって自らを再定義している。そして、ご存じの通りICはデジタル化の心臓部である」と述べる。同氏は、さまざまな企業が半導体技術を活用してビジネスモデルや物流、財務を変えようとしているため、これは半導体業界にとって非常に大きな機会を提供していると説明した。「IC設計市場には、毎日のように新しいプレーヤーが参入しており、それがEDAビジネスの成長をけん引することは明らかだ」(Sawicki氏)

 同氏は「今後数年間でデータトラフィックは400倍に増加すると予測されており、これらのデータを全て処理してネットワークに送信する必要があるため、半導体への依存はますます増えることになるだろう」と続けた。「このような大規模なシステムでは、もはやICを設計して検証するだけでは十分ではない。設計と検証だけでも非常に複雑なプロセスであるにもかかわらずだ。必要とされるのは、“実際のソフトウェアを実行し、物理的な世界と相互に作用する電子システム全体”を作り、検証し、評価し、シミュレートできるデジタルツインである」(Sawicki氏)

 Siemens EDAとなった旧Mentorは、Siemensのこれからにおいて要となるに違いない。

【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】

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