世界最高レベルの高輝度放射光施設として注目を集める「NanoTerasu(ナノテラス)」。2024年4月の本格稼働を前に、ナノテラス実現の立役者である東北大学 国際放射光イノベーション・スマート研究センター 高田昌樹教授に、ナノテラスの概要や誕生の背景を聞いた。
世界最高レベルの高輝度放射光施設として注目を集める「NanoTerasu(ナノテラス)」。2023年5月に開かれた「G7仙台科学技術大臣会合」(仙台市)では、高市早苗内閣府特命担当大臣(科学技術政策)をはじめ、各国の大臣クラスや海外産業団体などが視察に訪れた。
2024年4月の本格稼働を前に、ナノテラス実現の立役者の一人である東北大学 国際放射光イノベーション・スマート研究センター 高田昌樹教授に、ナノテラスの概要や誕生の背景を聞いた。
――ナノテラスは、どのような施設なのでしょうか。
高田昌樹教授 「NanoTerasu(ナノテラス)」は、太陽光の10億倍以上明るい光「放射光」を使って、モノの構造や状態をナノ(10億分の1)レベルで可視化できる“巨大な顕微鏡”だ。
東北大学 青葉山新キャンパス(仙台市)内に位置する東京ドームほどの大きさの施設で、世界最高レベルの高輝度放射光施設として、国内外から期待を集めている。本格稼働は、2024年4月を予定している。
――ナノテラスの特長や、他の放射光施設との違いを教えてください。
高田教授 世界には約50の放射光施設があり、うち9施設が日本にある。1997年に運用を開始した「SPring-8(スプリングエイト)」(兵庫県佐用町)は現在、国内最大規模の放射光施設だ。
SPring-8は、X線の中でも波長が短く金属材料の深部を見るのに適した「硬X線」を主に使う。それに対してナノテラスは、物質の電子状態やその変化を可視化できる「軟X線」を使う。
ナノテラスの特長は、軟X線を使う国内の既存施設と比較して約100倍の強度で軟X線を発生させられることだ。物質の詳細なデータを取得できるため、そのデータを基にグラフや2次元モデル、3次元モデルを作成することで、放射光の専門家以外でも視覚的に物質の状態を理解し、シミュレーションで活用できるようになる。
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