新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と九州大学および日東電工は、グラフェンなどの2次元材料を効率よく簡単に転写できる機能性テープ「UVテープ」を共同で開発した。開発した技術は半導体や絶縁体などの2次元材料にも適用できるという。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と九州大学および日東電工は2024年2月、グラフェンなどの2次元材料を効率よく簡単に転写できる機能性テープ「UVテープ」を共同で開発したと発表した。開発した技術は半導体や絶縁体などの2次元材料にも適用できるという。
次世代の半導体デバイス材料として注目されているのが、2次元材料である。炭素原子がハニカム構造をとるシート状物質のグラフェンなどがある。ところが、2次元材料は極めて薄いことから、転写には高度な技術が必要となる。一方、高分子保護膜による従来の転写方法では「欠陥」や「残りかす」による特性の低下などが課題となっていた。
NEDOは、2021年度より実施している委託事業「NEDO先導研究プログラム」で2次元材料の開発を始めた。この中で、成長基板からシリコンやフレキシブル基板などへ効率よく転写する技術について、九州大学や日東電工らと共同開発してきた。
2次元材料を効率よく転写するために用いるUVテープの開発に当たっては、「キャッチ・アンド・リリース」というアイデアを具現化した。まず、粘着力が強い状態でグラフェンをUVテープに「キャッチ」する。そして、UV光を照射することで粘着力を約10分の1に弱め、グラフェンをUVテープから「リリース」して基板に移すという。これは、グラフェンと粘着剤のファンデルワールス力を、UV光で制御し転写する方法である。人工知能(AI)を駆使して開発することにより、最高で99%の転写率を実現した。
「UVテープを用いて転写したグラフェン」と、「ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)の高分子保護膜を用いて転写したグラフェン」の表面を顕微鏡で観察した。UVテープによるグラフェンは、従来法に比べ欠陥や残りかすが極めて少なく、表面が平滑であることを確認した。さらに、グラフェンのトランジスタを作製し、グラフェンの中を流れるキャリア移動度を測定したところ、UVテープを用いた方が、より高い移動度分布を示すことが分かった。
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