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NVIDIAもIntelも……チップ開発で進む「シリコン流用の戦略」を読み解くこの10年で起こったこと、次の10年で起こること(80)(1/4 ページ)

プロセッサでは、半導体製造プロセスの微細化に伴い、開発コストが増大している。そこで半導体メーカー各社が取り入れているのが、「シリコンの流用」だ。同じシリコンの個数や動作周波数を変えることで、ローエンドからハイエンドまでラインアップを増やしているのである。

» 2024年02月28日 11時30分 公開

 半導体にかかわらず、ありとあらゆる製造物にはバラつきや不良というものが存在する。全てが良品で狙い通りの性能を出せるのが理想だが、さまざまなパラメータや環境によって出来栄えは違ってくる。そのため、一つの製品がときに一部の機能を停止して販売されることもあれば、性能を若干落として販売されることもある。実際にはあまりにも多様な製品の定義があるので、ここには書ききれない。

 有名なものはIntelのCPUだ。例えば、2023年10月17日に発売された第14世代の「CORE i9 14900K」である。シリコンそのものは、前世代の「CORE i9 13900K」と同じもので、第13世代の最大周波数が5.8GHzであったものに対し、第14世代は6.0GHzと周波数が上がったものになっている(だけである)。周波数を上げるためにCPU内部のクリティカルパス回路を改善している可能性もあるが、恐らくは同じシリコンを用いて、製造条件や製造時のターゲットを変えるといった変更を行い、第14世代を作ったものと思われる。

 本稿を書いている2024年2月20日現在は、まだ発売されていないが、Intelは周波数を6.2GHzにアップした「CORE i9 14900KS」を2024年3月に発売すると報じられている。Core i9 14900KSに対してはシリコンをテストで選別して製品化されると予想されている。半導体は、ベストで製造できれば高速化(ただし電力も増加するし、ホールド不良も発生する)、ワーストでは低速動作になる。いずれにしても同じシリコンが多くの製品に流用され、周波数の違いによって製品型名(末番含む)も変更されるケースが多い。

モンスター級のチップも NVIDIAの新GPU

 図1は、2024年1月に米国ネバダ州ラスベガスで開催された「CES 2024」でNVIDIAが発表し、同月に3機種が販売された新GPU「GeForce RTX 40 SUPERシリーズ」の様子である。

図1 2024年1月に発売された新GPU「GeForce RTX 40 SUPERシリーズ」 図1 2024年1月に発売された新GPU「GeForce RTX 40 SUPERシリーズ」[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 2022年10月から順次販売されたGeForce RTX 40シリーズは、「ADA LOVERACE」アーキテクチャのGPUとTensorコア、RTコアなどを実装したグラフィックGPUである。最上位のGeForce RTX 4090は、モンスター級のチップで、1シリコンに763億個ものトランジスタを搭載している。最下位のGeForce RTX 4050は、主にノートPCなどに組み込み用途として採用されており、搭載されるトランジスタ数は189億個。最上位のおよそ4分の1の規模となっている。これらの間にGeForce RTX 4080、4070 Ti、4070、4060 Ti、4060が2023年第2四半期までに発売されている。GeForce RTX 40シリーズは2023年末時点では上記7機種であった。CES 2024でSUPERシリーズが発表され、3機種が追加されて10機種になったわけである。

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