メディア

「独自のプロセッサがなくなる」 欧州が救いを求めるRISC-V「ハードウェアのLinux」(1/2 ページ)

英国のEU離脱や、ソフトバンクによるArmの買収などを経験したEUは、「EU独自のプロセッサがなくなる」という危機感を高めている。そのEUが救いを求めているのが「RISC-V」だ。

» 2024年03月11日 11時30分 公開
[Pablo ValerioEE Times]

 欧州連合(EU)は、RISC-Vアーキテクチャを使用して半導体チップの独立性を実現するためのイニシアチブに巨額の投資を行っている。こうした取り組みは、RISC-V技術開発のパイオニアであるバルセロナスーパーコンピューティングセンター(BSC:Barcelona Supercomputing Center)が主導している。

 EU首脳は最近、RISC-Vベースのチップ開発を推進するためのイニシアチブをいくつか開設した。これは、加盟国が半導体の開発/製造を外国企業に依存していることを懸念する声に対応するためのものだ。近年では世界的な半導体不足によって、サプライチェーンに混乱が生じ、半導体主権の重要性が浮き彫りになっていることから、こうした懸念がさらに高まっている。

 RISC-Vは、オープンソースの命令セットアーキテクチャであり、どの企業にも所有されていない。このためEUにとっては、優れた柔軟性と安全性を実現することが可能な、魅力的な選択肢となっている。

 BSCは、欧州の主要な研究センターの1つであり、RISC-Vベースのチップの開発において非常に重要な役割を担っている。

BSCのディレクターを務めるMateo Valero氏 BSCのディレクターを務めるMateo Valero氏 出所:BSC

 米国EE Timesは、欧州の半導体イニシアチブとBSCの役割について詳しく知るために、BSCのディレクターを務めるMateo Valero氏と、主席リサーチエンジニアであるTeresa Cervero氏に話を聞いた。

 BSCは、European Processor Initiative(EPI)や、そのスピンオフであるOpenChipなど、複数のRISC-Vプロジェクトを主導する。EPIは、新世代の高性能RISC-Vプロセッサの開発を目指す、7000万ユーロ規模のプロジェクトである。OpenChipは、BSCのRISC-V技術の商用化を目指す企業だ。

 BSCは、CPUシリーズ「Lagarto」で半導体チップの製造を開始し、2019年5月には65nm世代で最初のテープアウトを行った。Valero氏は、「われわれは現在、近い将来に7nm以降をターゲットとする、第4世代のLagartoコアを手掛けているところだ」と述べる。

 またBSCは、欧州の他の企業や研究機関との連携により、ソフトウェアツールやコンパイラ、OSなどを含む完全なRISC-Vエコシステムの開発にも取り組んでいる。

 Valero氏は、「これらのイニシアチブは、米国やアジアの半導体メーカーに対する欧州の依存度を下げることを目標とする」と述べた。「欧州半導体業界の堅牢性が欠けていることは、安全保障上の重大な脆弱性であり、欧州が基幹技術を海外サプライヤーに依存する要因となっている。RISC-Vは、“ハードウェアのLinux”であり、どの企業にも所有されることがないオープンソースISA(命令セットアーキテクチャ)だ。このためEUにとっては、優れた柔軟性と安全性を実現することが可能な、魅力的な選択肢の一つとなる」

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.