ソフトバンクは、RAN(無線アクセスネットワーク)上でAI(人工知能)を活用する技術「AI-RAN」に関するアライアンスを設立すると発表した。アライアンスにはArmやNVIDIAらが参加し、AI-RANの活用と高性能化やエコシステムの構築を目指すという。
ソフトバンクは2024年2月26日、RAN(無線アクセスネットワーク)上でAI(人工知能)を活用する技術「AI-RAN」に関するアライアンスを設立したと発表した。アライアンスにはArmやNVIDIAらが参加し、AI-RANの活用と高性能化やエコシステムの構築を目指すという。
ソフトバンクはRANへの設備投資を継続して行っているが、高周波の5G(第5世代移動通信)では必要な基地局の数が増えていることなどから、収益性は低下してきているという。
一方、AI関連技術は急速に社会生活に浸透してきていて、市場規模が大きく成長性も高い。このことからソフトバンクは通信事業にAIを取り込むことが重要だと考え、RAN上でAIを活用するAI-RANの開発を進めていた。
AI-RANの主要な領域は「AI-and-RAN」「AI-on-RAN」「AI-for-RAN」の3つに分類される。
「AI-and-RAN」は、RANの設備をAIのアプリケーションにも活用することで、設備投資効率を最大化するというものだ。スマートフォンなどの無線通信の通信量は時間帯によって大きく変動するため、深夜から朝方などユーザーの少ない時間帯は設備に余剰が出る。近年はRANのソフトウェア化が進んでいて、RANのサーバ上で別のソフトウェアを利用することができるため、RAN設備の余剰を収益性の高いAI用途に利用する考えだ。AI-RANアライアンスの記者説明会に登壇したソフトバンク 先端技術研究所 所長の湧川隆次氏は、「新しい収益源にしたい」と語った。
「AI-on-RAN」は、RANを通じてネットワークのエッジ側でAIアプリケーションを展開するというものだ。通信事業者のデータセンターで無線機能のソフトウェアとAI推論のソフトウェアを利用することで、低遅延/大容量の通信が可能になる。
湧川氏は「『5Gだからこそ』というアプリケーションはまだ出てきていない」と話す。5Gはスマホなどの端末と基地局間の通信を高速化するものだが、スマホアプリはその先のクラウドサーバ上で処理されているため、高速化を実感しにくいのだという。湧川氏は「AI関連アプリケーションこそが5Gが生きる新規サービスになる」と語った。
ソフトバンクは、手術補助やロボットとのコミュニケーションといったリアルタイム性が重視されるアプリケーションで、低遅延かつ広帯域通信のAI-on-RANが強みを発揮できるとする。また、AIで機密情報を扱うことに抵抗感のある企業にとっても「通信事業者が提供するサービスであることが、セキュリティの高さの担保になるのではないか」(湧川氏)とした。
「AI-for-RAN」は、AIを活用してRANの性能を高めるというものだ。周波数の利用効率が上がり、基地局の数はそのままで通信性能を向上させられるという。RANの各セルが行うチャネル推定やスケジュール処理といったあらゆるレイヤーの処理をAIによって最適化するほか、RANセル間の連携も最適化が期待できる。
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