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都立大ら、不揮発性磁気熱スイッチング材料を発見2つの性質を持つSn-Pbはんだ(1/2 ページ)

東京都立大学らの研究チームは、スズ−鉛(Sn-Pb)はんだを磁場中で冷却したところ、「磁石」と「超伝導」という2つの性質を持つことが分かったと発表した。さらに、はんだの超伝導転移温度である7.2K以下で、「不揮発性磁気熱スイッチング」の現象を確認した。

» 2024年03月26日 15時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

Sn45-Pb55はんだの不揮発性MTSRは150%

 東京都立大学や物質・材料研究機構(NIMS)、東京大学らの研究チームは2024年3月、スズ−鉛(Sn-Pb)はんだを磁場中で冷却したところ、「磁石」と「超伝導」という2つの性質を持つことが分かったと発表した。さらに、はんだの超伝導転移温度である7.2K以下で、「不揮発性磁気熱スイッチング」の現象を確認した。

 高性能、高集積化が進むデバイスでは、熱流を自在に制御できる熱スイッチング技術が求められているという。しかも、機械的な接触による熱流の「オン/オフ」ではなく、磁場や電場などを外部から加えて、熱伝導率の大きさを変える熱スイッチングが注目されている。

 既に、室温で磁気熱スイッチング比(MTSR)が150%を超えるスピントロニクス材料などが開発されている。しかし、磁場を「オフ」にしても熱伝導率の変化が維持されるような不揮発磁気熱スイッチングは、まだ実現されていないという。

 今回の実験では、SnとPbの重量比が45対55という市販の「ヤニなしはんだ(Sn45-Pb55)」を用い、定常法による熱伝導率の測定を行った。ゼロ磁場中ではんだを超伝導転移温度以下に冷却すると、Sn領域とPb領域の両方が超伝導状態となり、クーパー対が形成されて熱伝導率が低くなる。

 臨界磁場よりも高い磁場を加えると、Sn領域とPb領域の両方が常伝導となり、熱伝導率が高くなった。この状態から印加磁場をなくすと、Pb領域は超伝導状態に戻るが、Sn領域では磁束トラップが生じて常伝導状態を保つため、磁石としての性質を示した。この結果、高熱伝導率状態が維持されて、不揮発性を持った磁気熱スイッチングを実現した。

Sn-Pbはんだにおける不揮発磁気熱スイッチングの概念図 Sn-Pbはんだにおける不揮発磁気熱スイッチングの概念図[クリックで拡大] 出所:東京都立大学他
左上はSn45-Pb55はんだの電子顕微鏡像。右上と左下はエネルギー分散型X線分光法(EDX)による元素マッピング分析結果 左上はSn45-Pb55はんだの電子顕微鏡像。右上と左下はエネルギー分散型X線分光法(EDX)による元素マッピング分析結果。右下は左下図の矢印に沿った線分析結果[クリックで拡大] 出所:東京都立大学他

 Sn45-Pb55はんだの熱伝導率と磁場依存性の測定に当たっては、はんだを2.5Kまでゼロ磁場冷却し、そのあとに磁場を印加していった。初期状態の熱伝導率は約10Wm-1K-1である。はんだの臨界磁場は約800 Oeであり、臨界磁場以上の磁場下では常伝導状態(高熱伝導率)となり、熱伝導率は約35Wm-1K-1となった。

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